■叔母は賀来千香子、妻は榮倉奈々

 だが、コミカルな演技だけが賀来の魅力ではない。現在、深夜ドラマ「死にたい夜にかぎって」(MBS・TBS系)では新境地にも挑んでいる。

「賀来さんは、唾を売って生計を立てる女と暮らす主人公を演じていますが、これまでの作品とはまた違った、どこまでも底辺な男の役を静かに力強く演じています。簡単にいうとダメ男とダメ女の話なのに、賀来さんの眼差しがとても優しくて、見ているだけでせつなくなってくる。風俗に行き、風俗嬢に膝枕をしてもらうシーンも、その雰囲気や目線が非常にリアルというか、ダメ男の空気感をしっかり醸し出しています。思い切りのいい演技が賀来さんの魅力ですが、今回みたいな静かな演技もまた、すごくいい。今まで見たことがない俳優・賀来賢人を堪能できる秀作だと思いますね。コメディ俳優のイメージが強い彼ですが、シリアスな芝居ももっと見たいと思わせるほどの仕上がりでした」(同)

 ドラマウオッチャーの中村裕一氏は、賀来賢人の俳優としての魅力を次のように語る。

「4月スタートの大注目ドラマ『半沢直樹』において、ロスジェネ世代の証券マン役でレギュラー出演することが発表され、堺雅人との共演が今からとても楽しみです。もちろん主役は半沢ですが、彼をサポートしながら、ロスジェネ世代ならではの痛快な『倍返し』をきっと見せてくれるはず。ここでさらに俳優としての“格”が何段階も上がることは確実でしょう。もともとスマートで清潔感にあふれており、コメディでアクの強い役を演じてもまったく泥臭くないので好感度も非常に高い。花王、ソフトバンク、明星食品、日本生命といった大手のCM出演本数の多さもそれを物語っています」

 女優・賀来千香子を叔母に持ち、2016年に結婚した妻である女優・榮倉奈々との間には一児をもうけており、プライベートも充実。「根は真面目だし、スキャンダルとも無縁だと思いますので、30代若手俳優の筆頭格としてまさに死角なし、といったところでしょう」と中村氏は評価する。

 20代の大半はイケメン俳優として脇を務め続けてきたが、30歳にして一気にメジャーシーンへと躍り出た賀来賢人。彼がここから半沢直樹以上の倍返しを見せるのは、もはや既定路線に違いない。(藤原三星)

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藤原三星

藤原三星

ドラマ評論家・芸能ウェブライター。エンタメ業界に潜伏し、独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を書き続ける。『NEWSポストセブン』『Business Journal』などでも執筆中。

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