ライフイベントがどのくらい心身に負担をかけるのかをまとめた研究があります(図「ライフイベントのストレス表」)。

「定年」は、項目の中にはありませんが、「失業」、再雇用となれば「労働環境変化」「新しい仕事」「転職」「家計の悪化」「仕事の責任変化」「生活リズム変化」「習慣の変更」などが当てはまります。これらの要素の点数を足し算しただけでも、258点となります。

 表をもとにすると、1年のうちにこれらが重なると、翌年のうちに心身の不調に陥る可能性は「50%」となります。2人に1人が心身の不調になるくらい、定年後には大きな負荷がかかるのです。

 50代以降は、エネルギーが低下し、何かに挑戦したいと思う意欲も、ストレスへの打たれ強さも、知らず知らずのうちに低下していきます。これに追い打ちをかけてライフイベントが重なるのが、これからの時期。年齢を重ねるとともに人生は穏やかになっていく。定年を迎えればマイペースで楽しく生きられる、というのは楽観的すぎるイメージかもしれません。

 だからこそ、私は「定年というターニングポイントに向けて、10年ほどかけてしっかりと準備することが必要」だとお伝えしたいのです。体力も柔軟性もある50代のうちであれば、エネルギーの消耗を最小限にしながら、着実に準備を重ねることができます。(取材・構成/柳本操)