【表:ライフイベントのストレス】1年の間に経験したライフイベントの点数の合計が150点以下なら30%、150点から300点なら50%、300点以上なら80%の人は次の年に心身の不調に陥る可能性がある
【表:ライフイベントのストレス】1年の間に経験したライフイベントの点数の合計が150点以下なら30%、150点から300点なら50%、300点以上なら80%の人は次の年に心身の不調に陥る可能性がある
下園壮太(しもぞの・そうた)/心理カウンセラー。メンタルレスキュー協会理事長。1959年、鹿児島県生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊入隊。陸上自衛隊初の心理教官として多くのカウンセリングを経験。その後、自衛隊の衛生隊員などにメンタルヘルス、コンバットストレス(惨事ストレス)対策を教育。「自殺・事故のアフターケアチーム」のメンバーとして約300件以上の自殺や事故に関わる。2015年8月定年退官。現在はメンタルレスキュー協会でクライシスカウンセリングを広めつつ講演などを実施。『心の疲れをとる技術』『人間関係の疲れをとる技術』『50代から心を整える技術』(すべて朝日新書)、『自信がある人に変わるたった1つの方法』(朝日新聞出版)など著書多数
下園壮太(しもぞの・そうた)/心理カウンセラー。メンタルレスキュー協会理事長。1959年、鹿児島県生まれ。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊入隊。陸上自衛隊初の心理教官として多くのカウンセリングを経験。その後、自衛隊の衛生隊員などにメンタルヘルス、コンバットストレス(惨事ストレス)対策を教育。「自殺・事故のアフターケアチーム」のメンバーとして約300件以上の自殺や事故に関わる。2015年8月定年退官。現在はメンタルレスキュー協会でクライシスカウンセリングを広めつつ講演などを実施。『心の疲れをとる技術』『人間関係の疲れをとる技術』『50代から心を整える技術』(すべて朝日新書)、『自信がある人に変わるたった1つの方法』(朝日新聞出版)など著書多数

 定年まであと何年ですか?

 タイミングは人それぞれだが、日々の忙しさに埋もれていると、あっと言う間にやってきそうだ。

「老後資金など、お金の準備について思いを巡らせる人は多いのですが、多くの人は、新たな環境に向けて自らの価値観をゆるめたり、生涯楽しめそうな“好きなこと”を見つける、といった心の準備をし忘れたままで、定年生活に突入します。その結果、がらりと変わる環境や人間関係に適応できず、悩みを深めるケースが多いのです」と、元自衛隊メンタル教官で『50代から心を整える技術』の著者でもある下園壮太さんは言う。

 あまり知られていないが、自衛隊は退職年齢が早く、54歳から56歳の「若年定年制」を採用している。下園さん自身も56歳のときに退職し、先輩や同期の人たちが退職後にどのような状況になるかをつぶさに見てきたという。

「定年は、人生にとって大きなターニングポイントになるのは間違いない。その波をうまく乗り越えて充実した日々を歩める人と、うまく乗り越えられず苦しむ人に二極化する現実があります」。

 下園さんが目にした“第二の人生”のリアルなエピソードとは――。

*  *  *

■自衛官の生真面目さと新しい職場のミスマッチ

「若年定年制」を採用している自衛隊では、定年が早く、平均で55歳です。

 まだ十分働ける年代で退職するため、組織内には次の働き口を探す「再就職斡旋プログラム」というありがたいシステムがあります。保険会社の損害課など、いろいろな再就職先が斡旋されます。ところが、再就職先に移っても、新たな職場で苦戦している先輩方が多い、という話をちらほらと聞いていました。

 どうして新たな職場にうまく適応できないのでしょう。

 自衛隊は、規律正しい組織です。だから、真面目な人が多く、「与えられた内容以上の仕事をする」ことで充実感を得る、という仕事ぶりが定着しています。もちろん、そういった姿勢は再就職先でも高評価を受けます。

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しかし、その一方で…