パターン的には、プロ入り2、3年までの試行錯誤の末にサイドスローに転向することが多いが、特例もある。現役最強リリーフ左腕の日本ハム・宮西尚生は、まだプロで1試合も投げていない初年度の春季キャンプで投球フォームを改造。大学2年まで投げていたサイドハンドに戻した。

 そして、阪神で“ゴジラキラー”として活躍した遠山奬志は、高卒1年目にオーバースローで8勝を挙げた後、怪我、トレード、野手転向、戦力外と低迷期を過ごしたが、プロ14年目の1999年、就任したばかりの野村克也監督の勧めでサイドスローに転向して覚醒。同年63試合に登板して防御率2.09の好成績でカムバック賞も受賞した。

 一方、野手陣の「打撃フォーム改造」は、投手に比べるとポピュラーだ。グリップの位置や足の上げ方など、毎年のように微調整する選手も多い。

 その中で近年、大きく飛躍した打者と言えば、今オフに西武からレッズに移籍した秋山翔吾だろう。高校、大学を経てプロ入り。1年目からレギュラーとして出場を重ねたが、プロ4年間は打率3割を超えることはなかった。だが、5年目の2015年、それまでのバットを真っ直ぐに立てる形からバットを寝かせた状態でのスイングに改造。するとその年、前年の123安打から一気にNPB最多の216安打へとヒット数を増やし、打率も.259から.359へと急上昇させた。

 その他、近鉄の梨田昌孝は両腕をクネクネと動かしながらタイミングを取る「コンニャク打法」で自身の打撃面の弱点を克服。中日の種田仁はプロ11年目に「ガニマタ打法」を開発し、横浜でもうひと花咲かせることに成功。オリックスのT-岡田は2010年シーズン途中の5月に打撃フォームを「ノーステップ打法」に変更し、そこからアーチ量産体制に入って22歳で本塁打王となった。

 彼らのように、これまでの自分を「改造」させることは勇気のいることだ。そこには確実にリスクを伴う。それでもプロ野球選手は常に自らを磨き、進化していかなければならない。その“挑戦”に賛辞を送りながら、今後も大胆な「フォーム改造」で覚醒する選手の出現を期待したい。