そんな私の目には、今の事態はコロナウイルス感染症という病気そのものの脅威と同時に、ストレスによる影響も大きいように映ります。そして、病気は対策が確立すれば治まるように、ストレスについても、知識によってその拡大を予防できることを知って欲しいと思います。つまりストレスには、「知恵の予防注射」が効くのです。

 今回、4つの知恵の予防接種を用意しました。

 1つ目は、なぜ今回のストレスが大きいのかを知る。
 2つ目は、漠然とした不安の影響と対処法を知る。
 3つ目は、コロナ・ストレスは人間関係をむしばむことを知る。
 4つ目は、疲労をコントロールする必要性と方法を知る。

 まず、1つ目の知恵の予防接種は、今回のストレスの正体を知ることです。ストレスの正体や強度を知らないでいると、きちんとした対応をとることができません。

 今回のストレスが一般的な災害の心理ストレスに比べて手ごわいのは、(1)実態がわからない、(2)いつまで続くかわからない、(3)対処できるかできないかのギリギリラインである、という特徴があり、それぞれが、(4)人の「不安」と「自責」を刺激するからです。

(1)実態がわからない
 災害なら、被災状況を知り、あとは復興の手続きを進めることができます。今回は、何が、どれくらいの脅威で、どんなルートで、自分の身に降りかかってくるのかが読めないのです。だから一言でいうと、気を抜けない、目を離せない、状況が続いています。

(2)いつまで続くかわからない
 そんな気を抜けない状態が、数週間で終わるならそれほど問題はありません。しかし、今回は、どうも長引きそうです。年明けまでという話も出ています。

(3)対処できるかできないかのギリギリライン
 人は、自分が対処できることは努力し対応します。対処できないことは、あきらめます。

 今回のコロナウイルスへの対処法は、その境目にあるようです。マスクをする、手洗いをする、なるべく人込みを避けるといった、できることはある。でも、それが、どれほどの効果があるのか、定かではない。でも、やれることは全部やっておきたい。だからいつまでも不安が続いてしまうのです。

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