大量に問題をこなすことに慣れている子供に勉強を教えていると、ある共通のパターンがあります。問題の解き方を説明して、「わかった?」と聞くと「うん」と言う。ところが、その後に「で、先生、答えは?」と聞いてくる。答えに至るまでの過程に関心はなく、「結論だけが欲しい」という勉強になっているのです。

 誤解しないでいただきたいのは、そういった子供は、素直で真面目な子が多いのです。では、なぜそういった勉強法になってしまうのでしょうか。

 私は、つねに「スピーディーな学習」を求められ、そのことの問題に子供自身や家族、塾の先生も気がついていないからだと思います。大量の宿題を処理することだけが目的で、「あっ、わかった!」という状態を感じる余裕がありません。まして、自分自身の勉強のやり方が正しいのかについて考える時間は、当然ありません。特に、塾に入った頃は成績が良くても、徐々に伸び悩むようになった子供は要注意です。

 そういった子供のことを、私は「アタフタさん」と呼んでいます。私の感覚では、今、アタフタさんは大手進学塾に通っている子供の8割ぐらいを占めているのではないでしょうか。

 アタフタさんになってしまう要因の一つは、親です。アタフタさんの親は、テスト結果が戻ってくると「ウチの子はミスが多くて、点数が上がらない」と言う。また、塾から与えられた宿題は「すべて終わらせないといけない」と思っている。だから、子供に勉強を急かすことばかりしている。

 宿題の問題を一つ解くにも、子供の「自由裁量権」が大切です。どうやったらこの問題を解けるか、どうやったら歴史の用語を覚えることができるのか。自分で工夫できるようになることは、中学に入ってからの勉強でも、とても大切なことです。

 では、そんな子供はどのような勉強をしているのかというと、「スピーディーな学習」を中心としながらも、一部で必ず「スローな学習」を取り入れています。私は、そういった子供を「ちゃくちゃくさん」と呼んでいます。周りの人からは学習スピードが遅いように見えますが、「なぜ、この答えになるのか」を深いところで理解できている。ちゃくちゃくさんは塾の宿題をしていても、ショートカットに頼らず、自分なりに問題を考え、理解しようとします。

次のページ
正しい勉強法を身につけるための習慣