(イラスト/山中正大)
(イラスト/山中正大)

 手術を受けるにあたっては、誰もが不安を感じるはず。「長時間手術の際、医者は食事や排泄をする?」「手術時間を測るのはなぜ?」好評発売中の週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』では、そんな手術に関する疑問について、がん研有明病院の2人の医師に回答してもらっている。ここではその一部を紹介する。

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Q:手術着はなぜ白衣ではなく緑や青なの?

A:緑の残像による目のちらつきをなくして手術に集中するため

 医師は外来などでは白衣を着ていることが多いが、手術の際には緑や青の「スクラブ」と呼ばれる半袖の手術着を着用している。その上に着用するガウンや帽子も緑や青で、患者にかける布やカバーも同様のことが多い。

 長時間、血液や臓器など赤いものを集中して見続けると、特に白い背景を見たときに赤の補色である緑の点がちらつきやすい。

 背景を緑や青にすると、残像である緑の点がそれにまぎれて、視覚のちらつきをなくすことができ、手術に集中しやすくなると考えられている。

Q:手術室は無菌? 感染症対策はしている?

A:無菌ではなく感染症が起こらないように減菌されているのが一般的

 手術室は無菌ではなく、科学的根拠に基づいて、感染が起こらないレベルまで減菌するのが一般的だ。このため、無菌状態を目的とした床消毒などは日常的には必要ないとされている。

すべての手術機器は適切な指針に従って減菌され、手術室に出入りするスタッフは、手洗い・手指消毒、手袋、マスク、ガウン、帽子を着用して感染症を予防する。

 手術室は、空調などの環境整備が実施されている。手術室の空調は、給気を排気より多い状態(陽圧)にするために、扉を開けた際の気流を外向きにして室内の清浄度が下がらないように設計されている。

 また、手術する部位によって、清潔度が分けられ、整形外科や心臓血管などは「清潔手術」、呼吸器や消化器などは「準清潔手術」、消化管に孔があいていてすでに腹部に菌が充満している場合などは「不潔手術」というように分類される。清潔度が高い部位ほど、感染症に注意しなければならず、より清浄度が高い手術室で手術が実施される。

Q:長時間手術の際、医者は食事や排泄をする?

A:集中力を持続するため途中で休憩をとり食事や排泄をする

「たとえ10時間に及ぶような手術でも、手術中はトイレに行きたくならないのです」

 と、がん研有明病院消化器センター長の福長洋介医師。

「緊張していると抗利尿ホルモンが分泌されて、尿量が減ると言われています」

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手術の時間を測るのはどうして?