●現在も続く「醍醐の花見」

 醍醐寺には現在、約1000本の桜が時期を変えて咲き、花見は3週間ほど楽しむことができる。「醍醐の花見」をならい、毎年4月の第2日曜日に「豊太閤花見行列」が行われている。秀吉、北政所に加え淀ほかの側室、前田利家正室・まつらを装った人が乗った輿の行列は絢爛で、毎年境内は大勢の人で賑わう。

 令和2年は件の影響で残念ながら中止が決定しているが、桜の開花が格段に早そうな今年は花の彩りも過ぎてしまうかもしれないわけで、結果オーライかもしれないと前向きに捉えておこう。

●醍醐寺散策の注意

 京都のお寺はだいたい観光に向いていて、多くの寺社を短時間で拝観して回れるようになっている。ところが、醍醐寺の境内はとてつもなく広い。ほとんどの人は下醍醐と呼ばれている、五重塔や三宝院、観音堂や弁天堂あたりまでを観覧して終わりとしているのではないだろうか。

 もちろん、この下醍醐だけでもかなりの広さがある。春の桜だけでなく、秋の紅葉の季節には弁天堂と紅葉を映す弁天池の景色を皆が写真に収めたがる。私も秋に京都を訪ねたら必ず夜に足を向けるスポットである。

 だが、醍醐寺の開創の地はここではない。弁天堂のもっと先にある女人堂から山道を1時間ほど登ったところにある上醍醐の場所で、空海の孫弟子である聖宝が寺を開山したのである。

●開創の地・上醍醐

 醍醐寺は14万点を越す国宝を所持しているが、中でも薬師堂、清滝宮拝殿などの国宝堂宇は上醍醐に位置している。このほか上醍醐の開山堂や如意輪堂、清滝宮本殿は重要文化財に指定されている。醍醐寺をすべて拝観するつもりならば、時間にゆとりを持って出かけられることをお勧めする。

 もちろん下醍醐だけでも五重塔や三宝院唐門などは国宝であるし、霊宝館には国宝仏も鎮座しているので足腰に自信がない人はここだけでも十分かもしれない。

 派手好きな秀吉が始めた花見は、戦さのない世界の象徴でもあり、湯水のように使った金銭は長らく困窮し続けてきた人々にとっては恵みの雨となっただろう。それを分かっていて秀吉が散財していたとしたら、大した政治家である。たぶん知らずにやっていたのだろうけれど、今の世の中にあっては是非見習ってもらいたい姿ではあるまいか。(文・写真:『東京のパワースポットを歩く』・鈴子)

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鈴子

鈴子

昭和生まれのライター&編集者。神社仏閣とパワースポットに関するブログ「東京のパワースポットを歩く」(https://tokyopowerspot.com/blog/)が好評。著書に「怨霊退散! TOKYO最強パワースポットを歩く!東東京編/西東京編」(ファミマ・ドット・コム)、「開運ご利益東京・下町散歩 」(Gakken Mook)、「山手線と総武線で「金運」さんぽ!! 」「大江戸線で『縁結び』さんぽ!!」(いずれも新翠舎電子書籍)など。得意ジャンルはほかに欧米を中心とした海外テレビドラマ。ハワイ好き

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