常にチームや周囲を優先する姿勢で自らを苦しめていた姿もあった。球児の苦悩を見てきた松下氏だからこそ、『二重人格』というワードが出てきたのだろう。

 世間では、名球会入りの資格を得ることができる日米通算250セーブが大きく取り沙汰されている。しかし、そんな数字は藤川の視野に入っていない、と松下氏は語る。

「数字にこだわる男ではない。それでも現役を続けるというのは、チームに貢献して勝ちたいという気持ちが強いから。そのために二重人格になっている。仮に249セーブでも自分が納得できなければ、あっさりと辞める男。それが球児」

 フィジカルや技術も超越するメンタルを絶賛するダンカン氏は、ファンとして藤川と出会えたことに感謝している。

「生き様がカッコいい。長年、野球を見続けているけど、なかなかこういう選手に巡り合えない。見ている我々も本当に幸せだと思う」

(文・山岡則夫)

山岡則夫
1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌BallparkTime!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍、ホームページ等に寄稿している。BallparkTime!公式ページ、facebook(BallparkTime)に取材日記を不定期更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。