このミャンマーでの(私にとっての)発見や衝撃をきっかけに、東アジアや東南アジアで低用量ピルや緊急避妊薬が薬局で購入できるのか、弾丸で現地の薬局に行って確認するという調査を開始することにしました。

 もともと東南アジアに行ったことがなかったので、初めて訪れる国ばかりでしたが、ミャンマーを訪れてからの半年間で調査に行った国は、マレーシア、タイ、インドネシア、香港、そして、ちょっと足を伸ばしてUAE(ドバイ)と計6カ国です。インドネシアでは、「病院に行ってもらってね」と言われてしまいましたが、そのほかの国では薬局で購入できました。国によって値段は異なるものの、どの国も日本よりは安価な価格設定でした。

 余談ですが、ドバイでタクシーに乗った際、新型コロナウイルスの話題になりました。「中国人の観光客は全くこなくなったよ。ツアーのキャンセルも相次いでいるみたい。でも日本人は新型コロナウイルスの感染はないから大丈夫だろ。」と言われました。「日本でも感染が拡大しているよ」なんていったら、タクシーから降ろされてしまう気がして、返事ができませんでした。

 東南アジアを中心に、ピルの調査を積極的にやろうと思っていた矢先の新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う入国制限によって、調査が継続できるのか先行き不透明ではありますが、いつか日本の薬局でもピルを必要とする時に購入できる日を願って、そしてその足がかりとなると信じて、各国のピル事情を引き続き調べて行こうと思います。

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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