次に、鈴木さんが注目したのは「りスタート」の歌詞の冒頭部分「織姫と彦星の関係をロマンティックに感じなくなったのはいつから?」。

「歌詞の冒頭部分が疑問形になっていますよね? 実はこれも、作詞のテクニックの一つ。冒頭やサビ頭に疑問形を入れることで、リスナーを反射的に『自分だったらどうだろう?』って、歌詞や曲に感情移入させることができるんです。作詞家のプロがよく使うテクニックですね、もちろん私も。クロちゃんがそれを狙ってやっているのかは分からないですけど、疑問形をいきなり入れてくるなんて……もし感覚的なものでやっているとしたら、それはもう才能ですよ。最初聞いた時、『おっ!なるほど』って驚いてしまいました」

●登場人物がカオスなのに、まとまっている不思議な歌詞

 では、セカンドシングル「ろけっとすたーと」の歌詞はどうか。鈴木さんは「ろけっとすたーと」については「りスタート」とはまったく別物で、従来の作詞テクニックの枠にとらわれていない芸術的な歌詞だという。

「『りスタート』とは違い、統一性がまったくない作品ですね。白雪姫に、シンデレラに、チワワ……もう登場人物がカオスじゃないですか(笑)。伏線も全然回収していないし、キャッチーな言葉の無駄遣い(笑)。例えるなら、焼き肉に、お寿司に、トマトパスタに、美味しい食べ物を全部詰め込んじゃいましたって感じです。いくら美味しいものでも、混ぜて食べたら絶対不味いじゃないですか? でもこの曲は、不思議と一つの料理になっている。作詞のテクニックにも全然沿っていないのに、なぜかまとまっている感じが出せてるって素晴らしいですよ」

●「チワワを外に飼いならし実験」 プロが分析する歌詞の意味

 さらに鈴木さんは、サビの「タピオカキック」「ババロアパンチ」などのワードにも注目。中でも「チワワを外に飼いならし実験」という表現には衝撃を受けたようで、「表現が少し怖い」としながらも、このワードについて大絶賛した。

「びっくりしました(笑)。これ、すごいキラーワードです。ちょっと怖いけど(笑)。あくまで私の想像ですけど、たぶんこのチワワって『豆柴の大群』のことをさしているんじゃないかなって思うんです。チワワって、か弱いから、室内犬として、愛情をかけて、大切に飼われているってイメージでしょ? つまり、チワワを『豆柴の大群』に置き換えて考えてみると『か弱いから家にいなよ』じゃなくて『どんどん外に出て頑張ってきなさい』みたいなことを言ってるんじゃないかな。きっと、クロちゃんの中で『豆柴の大群』って、実験なんですよ。そう考えるとなかなかサイコパスな歌詞(笑)。でも私は、こういう歌詞大好きですよ。アイドルがこういうゲスで怖い歌詞を歌うって、ギャップが大きくて、面白い。このフレーズは、もう天才だと思いました」

「豆柴の大群」は、5月13日に1stアルバムを発売することが決まった。同日には、東京・マイナビ赤坂BLITSで初のワンマンライブも開催予定だ。「豆柴の大群」の躍進で、「クロちゃん作詞の天才説」が証明される?(AERA dot.編集部・岡本直也)