桶田さんの死についてラジオで語った爆笑問題の太田光 (c)朝日新聞社
桶田さんの死についてラジオで語った爆笑問題の太田光 (c)朝日新聞社

 先日、元お笑い芸人の桶田敬太郎がさんが亡くなっていたことが発表された。世間ではそれほど大きく取り上げられたニュースではないかもしれないが、個人的にはショックを受けた。村田渚さんと共にフォークダンスDE成子坂というコンビで活動していた桶田さんは、業界内の誰もが認める天才的な芸人だったからだ。

 フォークダンスDE成子坂というと、世間では『ボキャブラ天国』に出ていたときの印象が強いようだ。確かに、あの番組から始まった「ボキャブラブーム(ボキャ天ブーム)」の勢いはすさまじいものがあった。

 1992年に始まった『タモリのボキャブラ天国』(フジテレビ系)はもともと、視聴者から投稿された「ボキャブラネタ」と呼ばれるダジャレ的な言葉遊びのネタを紹介する番組だった。

 1994年に『タモリのSUPERボキャブラ天国』と名前が変わってから、若手芸人が自作のボキャブラネタを披露して競い合う「ヒットパレード」というコーナーが始まった。当時は、駆け出しの若手芸人が出られるようなネタ番組やコント番組がほとんどなく、ほぼ無名の若手芸人ばかりを集めて企画を行うこと自体が画期的だった。

 この番組がきっかけで、ここに出演していた芸人はアイドル的な人気を博すようになった。彼らのグラビアが掲載されたお笑いアイドル雑誌が次々に刊行された。お笑いライブには女性客が詰めかけて、ボキャブラ芸人たちに黄色い声援を送った。

 フォークダンスDE成子坂は、このブームの渦中にいたので、世間では彼らをボキャブラ芸人のうちの1組として認識している人が多い。だが、実のところ、ボキャブラ芸人の多くは彼らよりも少し下の世代の芸人だった。
 
 フォークダンスDE成子坂は芸歴が長く、この番組に出る前からテレビに出て活躍していた。彼らがブレークするきっかけになったのは、勝ち抜き形式のネタ番組『GAHAHAキング 爆笑王決定戦』(テレビ朝日系)で2代目チャンピオンになったことだ。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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