先月開催されたアントニオ猪木さんとのトークバトルのときにも話したけど、プロレスはいい加減だ、八百長だとか言われるんだけど、猪木さんは「プロレスは真正面からぶつかって、殺し合いなんだ」って。猪木さんは、それを世の中に訴え続けた人だったから、猪木さんの言葉には改めて共感したよね。

 体を痛めても家族のために頑張っている俺がいて、その姿を見守ってくれた女房がいて、娘がいて、なんかうまいことお互いがお互いをフォローしてきたっていうか、今は労わり合っているっていうのが正直な気持ちかな。

 最近結婚しない人が増えているけど、もったいないと思うよ。家庭を持ってみて、自分に足りないものとか全てを埋めてくれるものなんだっていうのに気付いて欲しい。結婚すると背負わなければならないものが煩わしいと思うのかもしれないが、自分に足りないものを埋めてくれるのも家族なんだ。俺の場合はそれが女房だったんだ。

 ここまで生きてきて、娘もこの歳になって、俺もこの歳になって、言葉が綺麗過ぎるかもしれないけれど、お互いを「慈しんでいる」って感じですよ(笑)。皆、歯を食いしばって頑張ってくれたねって。

 先月亡くなった野村克也さんが奥さんのサッチーを失ってからの生き様を見ていて、俺も気を付けなければいけないと思っているよ。女房に言われるんだよ、「あんた、気を付けた方がいいよ!」って(笑)。たしかに、俺は女房を先に失ったらノムさんみたいに落ち込んでしまうって思うよ。

 アメリカでプロレス修行していたときに「どこかで誰かが見ていてくれる」と思って頑張り続けることができた。女房と結婚して、見守っていてくれる人が近くにできたわけだからね。たった一人でも俺にとってそういう存在があれば頑張れる。女房を失ってしまっては大変なことですよ、本当に。

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天龍源一郎

天龍源一郎

天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ。「ミスター・プロレス」の異名をとる。63年、13歳で大相撲の二所ノ関部屋入門後、天龍の四股名で16場所在位。76年10月にプロレスに転向、全日本プロレスに入団。90年に新団体SWSに移籍、92年にはWARを旗揚げ。2010年に「天龍プロジェクト」を発足。2015年11月15日、両国国技館での引退試合をもってマット生活に幕を下ろす。

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