最後に紹介したいのが高嶋の後継者として指揮を執る中谷仁(智弁和歌山・通算4勝)だ。1997年夏の甲子園では正捕手として優勝に大きく貢献し、ドラフト1位で阪神に入団。プロでは不運な怪我もあって選手として大成することはなかったが、引退後に学生野球資格を回復し、2018年夏の甲子園終了後に監督に就任した。昨年は春夏連続で甲子園に出場。いずれもサヨナラ負けを喫したものの、戦力的には優勝してもおかしくないだけのチームを作り上げてきていた。高嶋は智弁和歌山では47歳で甲子園初勝利をマークし、そこからペースを上げて68勝に到達しているだけに、今年で41歳の中谷がそれを上回ったとしても全く不思議はないだろう。

 ここまで今後の高校野球をリードしていきそうな指導者たちを紹介してきたが、時代の変化とともに指導法も変わってきていることは確かである。以前のように監督が全てを担っているケースは少なくなり、健大高崎(群馬)のように多くのスタッフによる分業制をとっているチームも増えてきている。また、甲子園の勝利数以外でも指導者が評価される仕組みも必要となってくるだろう。令和の時代、今までとは異なる価値観を持った新たなスタイルの名将が登場することにも期待したい。(文・西尾典文)

●西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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