旅行シーズンを迎えた東南アジアは、観光客が増えることを期待している。航空券やホテル代も、それに合わせて値あがりする。そういう季節のサイクルを、大気汚染が崩しつつある。もう、さわやかな空気を期待できないのだ。雨が降る季節のほうが、空気が澄んでくる。

 タイは、日本では小乗仏教ともいわれる上座部仏教の国だ。雨の時期、僧侶は寺にこもり、人々は結婚式も控える。不快な時期だから、家のなかで静かにすごすことが習慣になってきた。雨季は雨安吾とよばれる。

 こういった1年のサイクルに影響を与えるのは、温暖化といった地球環境ではなく、人が生み出した大気汚染かと思うと、考え込んでしまう。

 今日もバンコクの空は暗い。

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下川裕治

下川裕治

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)など

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