また、01年からはさかなクンらしさを強調するためにハコフグ帽をかぶるようになり、今のスタイルが完成。06年には、東京海洋大学に客員准教授として招かれた。東京水産大学と東京商船大学が統合して生まれた大学なので、小学校以来の夢が叶ったことにもなる。

 10年には、絶滅種とされていたクニマスの再発見に関わった。NHKのニュースなどにも大きく取り上げられたものだ。

 ではなぜ、彼はお堅い分野でもカジュアルな分野でも活躍でき、しかも特別扱いされるのか。そこには、囲碁のトップ棋士だった父譲りの知力や、絵画・音楽のセンス、そして地道に努力できたり物怖じしなかったりというメンタルの強さといったものが関係しているのだろう。だが、それ以上に大きいと思われるのが、その浮世離れした雰囲気だ。

 たとえば、彼がサックスを始めたのは中学時代「水槽」と「吹奏」を間違えて吹奏楽部に入ってしまったことだという有名なエピソードがある。さもありなんと思わせる天然キャラは、今なお健在だ。

 そして、オタクとしての対象が魚介類というのがまたいい。島国の日本ではウケやすいし、前出の上皇陛下がそうであるように、皇族の方々の研究とも重なっていて、どこかめでたさやありがたみがある。ちなみに、秋篠宮殿下はナマズだし、昭和天皇も海洋生物の研究で業績を残された。

 そこで思い出すのが、史上有数のオタク・南方楠を昭和天皇が愛され、交流を持たれたエピソードだ。熊楠も奇人変人ぶりで知られたが、さかなクンも浮世離れしたオタクぶりが面白がられ、かつ畏敬されているのである。

 同じようにオタクや奇人変人的に世に出ても、ラーメン王などではこうはいかないし、ギャル曽根の大食いともまた違うものがある。さかなクンが別格たるゆえんだ。

■「いじめられている君へ」の反響

 また、彼には社会派的な一面もあり、06年には「いじめられている君へ 広い海へ出てみよう」と題した新聞コラムが話題になった。

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