■勉強は「質×時間」、むやみに時間を使ってしまうと非常に不利

 効率のよい点数のあげ方や記憶に残りやすい覚え方はもちろん、繁田さんが指摘した、各校への傾向を考える・優先順位をつける・スケジュールの立て方を知る・モチベーションを保ちやすくするなど、「勉強の仕方」を会得することは、受験でぐんと成長する鍵となる要素だと思います。

 また、「受験」に向かって能率的な道を考えることは、人生の「やりたいこと」をどのように達成するかを考える道のりに似ています。つまり勉強法を知ることは、中学、高校大学の勉強だけにとどまらず、ビジネスや人生にまで使える優位性があると思っています。

 今でもよく覚えているのですが、私が高校生のときの同級生で、常に真面目に授業を聞いているのに成績が伸びない友人がいました。「みんなと同じ授業を(むしろみんなより集中して)聞いているのに、なんで?」と不思議に思っていましたが、客観的に振り返ってみると、単に勉強の仕方がよくなかっただけなのです。

 勉強は「質×時間」であり、質が悪い勉強はいくらやってもむだになってしまうことが多く、特に受験時ではむやみに時間を使ってしまうと非常に不利になります。点数が上がらないとモチベーションも下がり、入試までにやる気をなくしてしまう可能性だってあります。

 大きな成長を成し遂げるためには、繁田さんの塾のように、「こうするといい」とアドバイスできる存在が欠かせないと思っています(もちろんハウツー本を読んでもいいですが、小学生はそんな本読まないでしょう……)。

 そして、東京(あるいは有名校がある土地)と、私の地元である静岡のような地方を比較すると、そのような勉強法を身につけるきっかけとなる場所があるかどうかでもかなりの差があるとは感じます。

 そもそも静岡市には、駿台予備校も代々木ゼミナールもSAPIXもなく、河合塾はあっても授業はすべて映像のみ(まあ個人的な経験から、大手塾が勉強法を教えてくれるとは思っていませんが)。

 そんなわけで、ただ今、塾が少ない地元の静岡で、「何かできないかなぁ」と構想を練っていたりします……そして可能ならタイムマシンに乗って、「成績が上がらない」と悩んでいた友人と一緒に、高3の秋の模試の結果で半泣きになっていた私にも、勉強法を教えてあげたいです。本当に、切実に。

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杉山奈津子

杉山奈津子

杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』『「うつ」と上手につきあう本 少しずつ、ゆっくりと元気になるヒント』など。ツイッターのアカウントは@suginat

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