代表の座に近づいた大迫傑(c)朝日新聞社
代表の座に近づいた大迫傑(c)朝日新聞社

「日本記録という形で、まだ(五輪に)内定はできていませんけど、次につながる走りができたと思います」

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 3月1日に行われた東京オリンピック。日本代表残る1枠をかけたレースで、大迫傑が快挙を成し遂げた。2時間5分29秒をたたき出し、自らが持つ日本記録(2時間5分50秒)を更新して、“自力”で日本代表の座に近づいた。

「前半のハーフはすごく速く感じた」(大迫)と話す通りの“超高速レース”だった。序盤、大迫と井上大仁は先頭集団でレースを展開。集団を引っ張っていたペースメーカーの設定は1キロ2分55~56秒だった。フルマラソンに換算して2時間3分台と、日本記録を大きく上回るペースだ。

「自分のキャパシティ以上で走ってしまうとつぶれてしまうと思ったので、体と相談しながら走った」と大迫。途中、先頭集団から遅れを取る場面もあったが、大きく離されることはなかった。

 強さをみせたのが中盤以降の走りだ。序盤からのハイペースにも関わらず、30キロを過ぎてペースを上げると、日本人トップだった井上を突き放した。その後も1キロ3分前後のペースを維持。37キロを過ぎてからは脇腹を抑える仕草が目立ち始めたが、「いつもあの場面で(痛みが)くるので、対策はわかっていた。落ち着いて走れた」と最後まで粘った。

記録更新を確信すると、大迫はゴールで雄たけびを上げながら拳を突き上げた。

 レース後のインタビューで、心境を問われると、「9月に(MGCで)3番になってから、苦しい闘いだったんですけど…」と涙に言葉を詰まらせながらも、力強くこう語った。

「勝ちたいという気持ちだけでやってきました。自分自身ベストを尽くせたと思う。東京オリンピックが決まれば、またそこで元気を与えられる走りができるように、これからしっかり練習していきたい」

日本代表は、8日に行われるファイナルチャレンジ最終戦「びわ湖毎日マラソン」の結果を待つことになる。日本記録を上回る選手がでなければ、大迫がそのまま東京オリンピック代表に内定する。(AERA dot.編集部/井上啓太)