「その後、各チームは試合延期の中、それぞれの本拠地で通常通りのトレーニングを続けています。上海申花の親会社は2000万元(約3億円)を武漢の医療現場に寄付するなど、サッカー界としても状況打開に貢献しようとしている。クラブの経営危機が表面化したという情報もないですし、彼らは粛々と試合再開を待っているしかないと思います」

 その中で、より深刻な状況に直面しているのが新型肺炎の震源地・武漢にホームを置く武漢卓爾。彼らは1月6日から武漢を離れて広州の1次キャンプに入り、1月末にはスペイン・セビージャへ移動。2月18日までの予定で2次キャンプを行って、今季開幕に備える計画だった。だが、1月23日に武漢が封鎖され、行き来不能になったことから、チームは3月に入ろうという今もスペインで足止めを余儀なくされているのだ。

 地元にいる家族との連絡手段は電話かメールなどに限られ、心配で涙を流す選手もいるという。加えて、予定されていたロシア1部のクラスノダル、デンマーク1部のオールボー、ジブラルタルのエウローパ・ポイントとの3試合を一方的にキャンセルされてしまった。クラブ側は新型肺炎感染者がいないこと、リスクがないことなど現状を説明したものの、相手側の納得を得られず、不当な扱いを受けたようだ。

 2017年に浦和レッズに在籍し、2018年から中国に赴いたブラジル人助っ人のラファエル・シルバもスペインに足止めされている1人。彼は「新型肺炎は怖いが、武漢卓爾を離れることは考えていない。契約通り、今シーズン限りはチームに残って戦うつもりだ」とブラジルメディアにコメントしていて、状況が変わるのを信じて必死に待っている様子だ。

 前出の北京在住記者は「彼だけでなく、中国スーパーリーグには数多くの外国人選手がいます。山東魯能にはベルギー代表で活躍したマルアン・フェライニや元イタリア代表のグラツィアーノ・ペッレが所属しており、広州富力にもベルギー代表で経験豊富なムサ・デンベレがいる。彼らスター選手は今季も中国でプレーすることが決まっているんですが、動揺がないかというのは断言できません。事態の収束が長引けば、契約を打ち切って帰国するような選手も出てこないとも限らない。そのあたりは不安です」と顔を曇らせる。

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日本はまだポジティブな状況だが…