週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』には治療数ランキングを掲載している。治療数の多さだけでなく、各治療数の比率にも着目すべきだという。

「ポリペクトミー、EMRでの治療は検査・健診部門でも実施可能です。そのため、ESD以外の割合が高ければ、検査・健診部門のほうが充実している可能性があります」(笹島医師)

 ポリペクトミーやEMRでの治療が可能と診断されている場合は、検査・健診部門が充実した病院を選択するのもよいだろう。

 ESDは本来、がんに対する治療法である。切除して初めて、がんか、がんではないかがわかるケースもあり、ESDによる治療をがんだけにおこなうのは不可能だ。しかし、がんの比率が高いほど、ESDの適応を見極めて治療しているといえる。

 さらに、内視鏡治療の中でがんを多く扱っていれば、良性腫瘍などに比べ、より難度の高い症例に対する経験が豊富ともいえる。

 岡医師は以上のような見方をもとに、次のように指摘する。

「がんの割合が高ければ、治療が難しい粘膜下層のがんのような病変を多く扱っていると推測できます。このような病院と、比較的難度の低い症例を中心に扱う病院の“すみわけ”が始まっているようです」

 また、笹島医師は信頼できる病院の指標として、がんの取り残しのない治療の割合である一括切除率と、内視鏡治療の代表的な合併症である腸管に穴をあけてしまう割合を示す穿孔率を挙げる。

 腸管に穴があけば緊急外科手術が必要な場合もあるため、必ず確認しておきたい数字だ。

「一括切除率と穿孔率の数値を、医師に尋ねたり、病院のホームページで調べたりして確認しましょう。一括切除率95%以上、穿孔率3%以下を、どちらもクリアしていることが理想です。これらの数値は、安全性とがんの根治性という、治療に必要な両輪がそろっていることをあらわし、質の高い医療を提供しているといえます。各病院はこれらの数値を必ず把握しているので、治療を受ける前にぜひ聞いておくべきです」(笹島医師)

(文/近藤昭彦)

≪取材した医師≫
広島大学病院 消化器・代謝内科 診療准教授 岡 志郎 医師
さいたま赤十字病院 消化管内科 部長 笹島圭太 医師

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』より