しかし、大腸がんの場合、がんの部位によって治療方法や手術の難易度が異なる。そのため、病院選びでは大腸がん全体の手術数だけでなく、結腸がん、直腸がんそれぞれの手術数に注目することが大切だ。週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』では病院ごとの結腸がん、直腸がんの手術数を掲載している。自分のがんの部位の手術数を確認しよう。

「とくに直腸がんは、人工肛門になるかどうかなど、医師の技量の差が出やすい。大腸全体ではなく、直腸がんの症例数の多い病院を選ぶべきです。手術の良しあしで、骨盤内の再発に差が出ることが明らかになっています」(的場医師)

 石田医師はそれぞれのがんの手術数が多い病院の要因を次のように分析する。

「直腸やS状結腸のがんは、出血や排便異常といった症状が出やすいのに対して、右側結腸がんは症状が出にくく、内視鏡検査で初めて発見されやすい。このため、内視鏡検査に積極的な病院では、右側結腸がんの手術数が多い傾向にあるかもしれません。また、直腸がんは重症化しやすいため、直腸がんの手術数が多い病院は、重症例の紹介が多いという見方もできます」

 的場医師は、直腸がんなら術前化学療法の数も重要だと話す。同療法の多くは放射線療法と併用されている。直腸がんの術前化学放射線療法は、がんを縮小させることがデータでも明らかになりつつあるのだ。

「放射線によってがんを縮小させることができれば、がんを取り切ったうえでの肛門温存がしやすくなります」(的場医師)

 肛門温存を希望するなら、当然、ISRの数もチェックすべきである。ISRも、手術数が多い病院ほど技術が高く安心して受けられると、両医師とも同様の見解だ。

 的場医師によると、手術数の多い病院ではとくに腹腔鏡手術の手技が向上し、施設間での差はあるものの、ほとんど腹腔鏡手術でがんを取り切ることができるようになってきた。それに伴い開腹手術は、腸閉塞や腹膜炎を併発している場合など、限られた場合でしかおこなわれていないのが現状だという。

「開腹手術が必要なケースはもちろんあります。有効で安全な治療法の一つであることに違いありません。多くの症例をみている病院は、腹腔鏡手術か、開腹手術かの判断も適切におこなわれている可能性が高いでしょう」(同)
(文/近藤昭彦)

≪取材した医師≫
虎の門病院 消化器外科部長 的場周一郎 医師
昭和大学横浜市北部病院 消化器センター教授 石田文生 医師

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』より