食事の場は、たんなるカロリー摂取ではありません。温かい家庭の雰囲気のなかで、居場所に来る友だちや大人たちと話しながらの団らんの場です。居場所を一歩出れば、現在進行形で課題に立ち向かっている子にとって、キートスでの食事は、なにより「心の栄養」になっているのでしょう。

 キートスの代表者・白旗眞生さんは、全国で休校が相次ぐなか「キートスは開けられるところまでは開けておこうと思う」と言います。理由は「うちが閉まったら、コロナで死ぬより前に、食べられなくて死んじゃう子もいるからね」と。

 神奈川県川崎市の「フリースペースえん」も、一時休校をしない決断を固めた団体です。えんは、不登校、障害、貧困、虐待など、さまざまな理由で学校や家庭、地域に居場所を見いだせない子どもたちの「たまり場」をつくってきた団体です。えんでも食事と居場所を提供し、1日40人が食事をしています。そこには年齢や性別、立場も関係なく、みんなが家族のように食事をしています。

 いっしょにご飯を食べて、いっしょに遊び、大人が向き合ってくれる場があれば、困難さを抱えさせられた子も「自ら動き始める」とえん代表の西野博之さんは言います。

 27日、安倍首相の意向が表明された瞬間は、代表の西野さんも「どうしよう」と休室を悩んでいました。しかし、一晩経って覚悟が決まったようです。

「最も困難な状況に置かれた子が選んだ場を大人が奪ってはいけない」と。

 えんは、学校のように強制されて登校する場ではありません。自らの意志で集まる場です。感染が怖い人のためではなく、いま、何らかの理由でえんを必要とする人のためには開けてくそうです。不安な時ほど、子どもの「主食」である遊びを奪ってはいけないとも考えたそうです。(もちろん、どちらの団体も手洗いや咳エチケットなど可能な限りの感染予防をした上での運営です)

 また、今回の休校要請により「コロナの感染に不安をおぼえた大人の反応が、まわりめぐって、結果的に子どもへの暴言・暴力に結びつかないように、最大限の注意を払う必要がある」とも言います。

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「学校依存の教育体質」の脆弱性