※写真はイメージです(Getty Images)
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 全国の学校が一斉に休校になる――。全国不登校新聞の編集長・石井志昂さんが真っ先に思い浮かべたのは、一斉休校になることで命の危険にさらされかねない子どもたちの存在だったという。あるフリースクールの代表者は苦渋の末、「開けられるところまでは開けておこう」と決意を固めた。

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 2月27日、安倍晋三首相が新型コロナウイルス感染症対策本部で、全国の小・中・高校、特別支援学校に臨時休校を要請する考えを表明しました。突然の休校要請によって多くの家庭が混乱し、ネットでは「急に子どもの面倒なんてみられない」など批判の声が上がっています。

 ふつうの家庭でもたいへんなところですが、貧困世帯の場合、学校給食やフリースクールでの昼飯が支えになっている子どももいます。受け皿も用意せず、いきなりの休校要請は強引すぎると批判せざるを得ません。安倍首相は「課題には政府として責任をもって対応する」と発言していますが、そもそも政府の眼からは見えない課題も多かったのではないでしょうか。

 まずは休校要請によって、困ってしまう子が3タイプ挙げられます。

「障害などを持っているため日常的な支援が必要な子」

「食事が満足に与えられていない子」

「虐待があったなど長時間、親とすごすのが危うい子」

 今回の休校要請では特別支援学校も入っており「日常的な支援が必要な子」もいます。学校がなくなると、その支援は、家族の手で賄うしかなく休校によって「親が働けない」「家事もできない」などの事態が想定されます。

 また、「食事が与えられない」「虐待」などは、特別な家庭で起きることのように思われますが、そうではありません。日本の子どもの貧困率は13.9%、およそ7人に1人の子どもが貧困です(厚生労働省「国民基礎調査」より)。また年間の虐待相談件数は15万9850件(厚生労働省調査)。過去最多を更新虐待しています。

 こうした問題を肌で感じ、子どもを支える場が学校以外でも必要だと動いている団体があります。その一つが「青少年の居場所キートス」(東京都調布市)です。キートスでは来た子どもたちに対して無償・無条件で食事と居場所を提供しています。たまに来る子も毎日の子も、虐待や貧困など課題ごとに子どもを選り分けることもなく食事を出しています。

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石井志昂

石井志昂

石井志昂(いしい・しこう)/1982年、東京都町田市出身。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた

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食事はたんなるカロリー摂取ではない