●スカイツリーに一番近い神社は

 スカイツリーの立つ「押上」は、現在、各線の中継地点としてよく知られているが、「おしあげ」という地名の由来がはっきりしない。一部では、川によって堆積した土砂が少しずつ押し上げられて陸となった場所だから──とも言われるが、スカイツリーに一番近い神社「押上天祖神社」には創建についてこんな言い伝えも残る。京成橋(現在の四つ目通りに掛かる橋)付近で川が増水した折、堤防に押し上げられてあった御神体を祭ったことに始まると。そうだとすれば、「押上」の地名の由来は押上天祖神社ということになる。

 実際、押上天祖神社は江戸時代には「押上」の鎮守として記録されていて、一帯の守り神であったことがわかる。現在は「牛嶋神社」の末社であるが、延元年間(1336年頃)からこの地に鎮座していたと考えられている古社である。境内からはスカイツリーを真上に見上げなければならないほどの迫力がある。

●スカイツリーに一番近いお寺は

 スカイツリーに一番近いお寺は、春慶寺でこちらも一部の人たちの間では有名なお寺である。もちろん、都内では数少ない普賢菩薩を祭るお寺であるし、江戸時代の大戯作者・鶴屋南北のお墓もあるので江戸時代からよく知られたお寺ではあるのだが、現在の日本では、何より「鬼平犯科帳」の登場人物である岸井左馬之助(長谷川平蔵の盟友)の寄宿地として、鬼平ファンには欠かせないお寺なのだ。お寺の入り口に立つ碑の文字は、左馬之助を演じた江守徹さんのものである。

●スカイツリーを囲むように鎮座するめずらし所

 さて、スカイツリー開業の神事を執り行った「牛嶋神社」は、現在隅田川近くに鎮座しているが、江戸時代まではもう少し北側に位置し「牛ノ御前」と呼ばれていた。創建が貞観2(860)年というから、平安時代の初期から鎮座していたことになる。境内には、珍しい三ツ鳥居が見られ、「撫で牛」は心の病を治癒するご利益もあるとして知られている。

次のページ