「部下が会議で発言してくれない」。そんなふうに悩んでいる上司は多いもの。「会議での沈黙」を打破するために必要なのは「傾聴する」スキルだという。その真髄を、一般社団法人日本傾聴能力開発協会の代表理事・岩松正史氏による著書『その聴き方では、部下は動きません。』(朝日新聞出版)から一部を抜粋・再構成して紹介する。

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 私は15年前から、「沈黙が苦手な人がどれくらいいるか」のアンケートをとっています。その結果では、沈黙が苦手な人はおおよそ5割です。

 この数字を聞いて、意外に多いなと思われるでしょうか? それとも、意外に少ないなと思われるでしょうか? なかには、自分が沈黙恐怖症であることに気がついていない人もいるかもしれません。

 たとえば、「会議の最中、部下に意見を求めてもなかなか発言してもらえない」と悩んでいる人がいます。でも、そういう上司のなかに、意外と沈黙恐怖症の人が多いのです。

 沈黙恐怖症の上司を持つ部下たちが、なぜ黙っているか? それは、「しばらく黙っていれば、勝手に上司が語りはじめて結論を出してくれる」ことを、部下たちが知っているからです。

「多弁は詭弁」ともいわれます。相手を理解するには、自分の内面を見つめている沈黙に黙ってつきあうことも必要です。

■沈黙が怖くなくなる「沈黙ゲーム」

 沈黙が苦手な人のために、とても効果的な沈黙の慣れ方を1つご紹介します。「沈黙ゲーム」です。

 沈黙ゲームは、1対1でも、1対複数でも使えます。沈黙になったら、自分のなかで勝手に「先に口を開いた人は負け」とルールを決め、一人でゲームをはじめます。

 ゲーム中にすることは、「人間観察」です。その場にいる人(たち)をゆるく観察します。自分にあえて観察者という役割を与え、「これはゲームなんだ」と思うことで、自意識過剰になることを防ぐことができます。相手の動きを見て「この人はいま緊張しているのかな?」「意外とみんな平気なんだな」など想像しながら、ただその場にいます。

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沈黙ゲームの結果は、2種類