(イラスト/寺平京子)
(イラスト/寺平京子)

 週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から回答を得た結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。病院ランキングだけでなく、治療法ごとの最新動向やセカンドオピニオンをとるべきケース、ランキングの読み方などを専門の医師に取材して掲載している。ここでは、「胃がん手術」の解説を紹介する。

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「近年はからだに負担の少ない腹腔鏡手術やロボット手術が進歩しています。また、胃の機能温存を考慮して胃全摘をなるべく避け、少しでも胃を残そうという試みが増えています」

 そう話すのは都立駒込病院の長晴彦医師だ。胃の上部にがんができると、全摘を余儀なくされることが少なくなかった。しかし近年、胃の上部だけ切除して下部は温存する噴門側胃切除術が増加しているという。

 胃の入り口の噴門は巾着状になっており、胃のなかのものが逆流しないようにできている。以前は噴門の機能を再建することが困難で、胃を残すほうが逆流のリスクが高かった。しかし、逆流をなるべく減らすいくつかの方法が現在おこなわれている。

「噴門側胃切除後の主な再建方法は三つ。観音開き法は食道と胃のつなぎ目に噴門と近い機能を持たせ、逆流を防ぎます。特徴は手縫い。腹腔鏡手術ではやや苦労しますが、ロボット手術であればそれも補えるでしょう。ダブルトラクト法と空腸間置法は、食道と胃を直接つながないことで距離的に逆流しにくくします。どの再建方法が最善かは明らかではありません」(長医師)

 1病院あたりの手術数が減少傾向だと話すのは、倉敷中央病院の河本和幸医師だ。それには二つの理由が考えられる。

「胃がんは内視鏡検査の発達で早期発見が増えており、内視鏡治療で治る率も高くなっています。また、胃がんの手術方法は確立されていて、難度の低い早期がんであればどこの病院でも同じレベルの手術が受けられるため、分散しているのです」

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胃全摘の場合、セカンドオピニオンを検討しても