でも、ひもでは問題があります。おもちゃの数が多いと、ひもがからまって結び合わさってしまいます。そこで、ひものかわりのものを考えてみます。要はおもちゃ自身が帰る場所を覚えていて、自分で帰ることができればいいわけです。

 おもちゃではないですが、自動お掃除ロボットならばそれができます。お掃除が終わったら、自分で所定の場所に戻り充電ができますね。ですので、不可能な技術ではありません。

 自分で帰れないおもちゃの場合はどうしたらよいでしょうか。自分で戻れなかったとしても、おもちゃが帰る場所を知っていて教えてくれるだけで、片づけるのに便利です。

 たとえば、すべてのおもちゃにQRコード(二次元バーコード)を貼っておき、スマートフォンでそれを撮影すると、おもちゃをしまう場所が表示されるというのはどうでしょうか。そんなアプリができれば、片づけも楽しくなりそうです。やがて、しまう場所を覚えてしまえば、片づけもそれほど苦労ではなくなるはずです。

 ちなみに、人間の記憶は、最後の作業の印象に全体の印象が大きく左右されることが知られています。そのため、遊びが終わった最後にまとめて片づけるというのは望ましくありません。最後を「いやな作業」で終わらせたために、それまでの遊び全体が楽しくなかったという印象が残ってしまいます。

 片づけ自体を楽しくできればベストですが、それが難しい場合には、片づけしたらもう少しだけ遊べるよと、最後に“ごほうび”をつくるのがよいです。

 余談になりますが、前述した手品に興味をもった方に注意をお伝えしておきましょう。手品用品を自分で作る場合は、釣り糸が目立たない半透明のコップを使うこと、赤玉の糸は短めに、白玉の糸は長めにすることが重要です。実演では、混ぜるときには赤玉のコップを下に、分けるときには上下逆にして赤玉のコップを上にします。ぜひ試してみてください。

【今回の結論】おもちゃ自身がどこに帰ったらよいかわかっていないので、散らかってしまう。それがわかるように工夫し、おもちゃ自身で帰れなくても、使った人がおもちゃを楽しく元の場所に戻せる方法を考えよう

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石川幹人

石川幹人

石川幹人(いしかわ・まさと)/明治大学情報コミュニケーション学部教授、博士(工学)。東京工業大学理学部応用物理学科卒。パナソニックで映像情報システムの設計開発を手掛け、新世代コンピュータ技術開発機構で人工知能研究に従事。専門は認知情報論及び科学基礎論。2013年に国際生命情報科学会賞、15年に科学技術社会論学会実践賞などを受賞。「嵐のワクワク学校」などのイベント講師、『サイエンスZERO』(NHK)、『たけしのTVタックル』(テレビ朝日)ほか数多くのテレビやラジオ番組に出演。著書多数

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