その一方、前年1位で監督交代したケースは2回、前年2位も4回しかない。1位のケースを見てみると、2015年のソフトバンクは前任の秋山幸二監督が家族の事情であり、2012年の中日は落合博満前監督と球団の対立があったというレアケースである。そして前年2位という好成績を引き継いだ新監督の例を見てみると、見事に優勝を果たしたのは2012年の栗山監督だけであり、4例中2例はBクラスに沈んでいるのだ。

 そのうちの一つがまさに野村監督の後を引き継いだ2010年のブラウン監督である。また前年3位だったチームを引き継いだ例を見ても、今年の三木監督の楽天を除く3度のケースで翌年順位を上げられているのは昨年優勝した原監督しかいない。サンプル数は少ないものの、2位や3位でチームを引き継いでも、翌年優勝することは至難の業であることがよく分かるだろう。

 ちなみに楽天が球団創設以来Aクラス入りを果たしたのは4回あるが、そのうち2回で翌年監督を交代させている。優勝に向けて更に攻める姿勢を見せていると言えなくもないが、過去の例を振り返ってみても得策と言えるか微妙なところである。奇しくも日本ハムで2位から優勝を果たした栗山監督、そして今年楽天で指揮を執る三木監督は初めての監督就任であり、野村監督のもとでプレーした経験があるという点も共通している。そういう意味では期待を持ちたいところではあるが、果たして吉と出るのだろうか。そういう視点でも今年の楽天の戦いぶりに注目したい。(文・西尾典文)

●西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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