週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』に掲載のランキングで手術数とともにチェックしてほしいのが温存率だ。割合は施設によって差があることがわかる。温存率が極端に高いケース、逆に低いケースもある。

「温存率が40~60%くらいの病院だと、患者さん一人ひとりに合わせて根治性と整容性を重視した手術ができていると考えられます」(同)

 乳房を温存した場合、手術後に放射線治療が必要になる。温存率が高ければ、放射線治療の数も多くなる。

 乳がんの薬物治療は個別化が進み、新しい薬も登場している。腫瘍内科医の役割が大きくなっているため、本誌の調査では薬物療法の専門家である腫瘍内科医の数も聞いている。

「最近は腫瘍内科医が増えてきましたが、従来乳がんの薬物治療は外科医が実施してきました。薬物治療に詳しい外科医も多いので、腫瘍内科医がいないからといって心配ということはないと思います」(林医師)

 ランキングを見るとわかるように、乳がんの場合、上位には大学病院などの総合病院のほか、乳腺専門の病院やクリニックも目立つ。乳腺を専門とする大阪ブレストクリニック院長の芝医師はこう話す。

「総合病院に比べて規模が小さいので、入院や退院の時期など患者さんの要望に合わせやすいと思います。乳腺に特化しているので、術後のケアや精神面のフォローなどトータルで乳がん患者さんを診ることができます。また、治療と仕事の両立を支援し、社会福祉士のスタッフが相談に応じています。一方、合併症のある患者さんはほかの診療科と連携しやすい総合病院に紹介しています」

 乳がんはほかのがんに比べて若い年代で発症しやすく、仕事や育児とどのように両立していくかなど、ストレスがかかりやすい。また、治療後5年以上経ってから再発することもあり、精神面の不安も大きい。こうした面をケアするような態勢があるかどうかも病院選びのカギとなるだろう。(文/中寺暁子)

≪取材した医師≫
大阪ブレストクリニック 院長 芝 英一 医師
聖路加国際病院 乳腺外科医長 林 直輝 医師

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』より