――料理中の音や映像も、見ていて食欲をそそられます。

 作業系の動画をぼーっと眺めるのが好きっていう人は結構います。実は包丁やまな板の音にもこだわっているんです。靴磨きも、ブラシがこすれる音が好きで見ているという需要もあると思います。クリエイターは動画の「視聴者維持率」がみられるんですけど、作業系の動画は維持率が高くなりやすい。逆に、僕が食べるシーンになると、がくんと落ちてしまうんです(笑)。

――二郎系とかは手間がかかりそうです。

 煮込むのに時間がかかるので、だしから作ると6時間はかかります。キッチンを占拠してしまうので、以前は看護師の妻が夜勤でいないときを狙って撮影していました。大変ですけど、10回以上作っているので、今ではレシピを見ずに作れます。

――その奥さまですが、芸人の時に出会われたそうですね。「安定した仕事について!」とか言われませんでしたか?

 特になかったです。今年、長男が生まれましたが、妊娠をきっかけに妻は看護師を辞めて、昨年3月に始めた夫婦チャンネルの編集をしてもらっています。

 でも正直なところ、YouTubeで一生食べていくのは無理だとも思っています。だから、動画配信が行き詰まったときのことを考えて、今年の5月、靴磨きの専門店を池袋に開く予定です。靴磨きのチャンネル登録者数(約9万4千人)が宅飲み(約21万人)よりも少ないのに、靴磨きを「メインチャンネル」と位置付けているのは、そのためです。

――そうは言っても、今の収入ってすごいんじゃないですか?

 動画は2チャンネルあわせて月間300万PVくらいになりました。実は、今でもコールセンターで月に6日はバイトしているんです。YouTuberは個人事業主にあたるので、社会保険に入れません。妻と子どものことを考えた結果、保険に加入するためにバイトを続けています。

――最後に、今後の展望を教えてください。

 ジャンルを広げるつもりはありません。現状維持ができればいいかなと。動画の再生回数にはまだまだバラつきがあって、今も綱渡り状態です。動画がヒットすればおいしい商売ですが、「次も数字を取らなければいけない」というプレッシャーもあります。YouTuberとしてなんとか1日でも長く続けられればいいですね。

●おっくん/1990年生まれ。東京都出身。早稲田大学を卒業後、約1年半、大手携帯会社に勤務。芸人になるため退社し、2015年に吉本興業の芸人養成所「NSC」に東京21期生で入学、16年に卒業。お笑いコンビ「スバル」などで活動するも、17年に解散し、芸人を引退。その後はYouTuberとして活動する。1児の父。

(聞き手・AERA dot.編集部・井上啓太)