先輩投手のアドバイスで入浴を控え、しばらく洗い場で仰向けになっていたが、脱水症状やじんましん、視野狭窄などの症状が出て、血圧も上が50近くにまで下がる危険な状態に陥った。落ち着いたところを見計らって、病院に搬送され、アナフィラキシーショック(全身性のアレルギー)と診断された。医師は「キャンプ続行も可能」と判断したが、命にかかわるケースもあるので、球団は大事をとって帰京させた。血液検査の結果、練習前にそばを食べたことが原因のそばアレルギーと判明する。


 
 太めの体とユーモラスな風貌とメガネをかけた姿から“球界の高見盛(現東関親方)”の異名もとった話題のルーキーとあって、この事件はスポーツ紙の1面トップで報じられ、高見盛が師匠の東関親方(元関脇・高見山)から「激励(見舞い)に行ってこい」と命じられるひと幕も。

 その後、「運動前にはそばを食べません」と球団に誓約書を提出してチームに復帰した佐藤は、同年は貴重な左の中継ぎとして21試合に登板。8年間プレーしたあと、現在は打撃投手としてチームを支えている。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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