■鳥栖 C

 ギリギリまで残留争いを強いられた昨シーズンから飛躍を果たすために、即効性の高そうな補強を敢行している。象徴的なのが小屋松知哉(←京都)の獲得で、左サイドから鋭いカットインが1つの武器になりそうだ。一方で昨シーズン途中に鹿島からレンタルで加入していた金森健志が完全移籍で加入となり、左から小屋松、右から金森というサイドアタックは相手の脅威になりうる。

 FWの主力は引き続き攻守にハードワークできる金崎夢生が有力だが、長身のレンゾ・ロペスが明確なターゲットマンとして金明輝監督の信頼を勝ち取れれば、攻撃のバリエーションが確実に広がる。長く活躍した仙台から加わったMF梁勇基は主軸の原川力とともに、インサイドから攻撃のアクセントを加える。

 また最終ラインの左センターバック候補として大型レフティーの宮大樹(←水戸)とエドゥアルド(←松本山雅)が加わり、左サイドバックの内田裕斗(←徳島)も攻め上がりだけでなく、ビルドアップに定評のある選手。これらの補強を見ても、バックラインからのワイドな組み立てを意図しているのは明らかだ。

 総合力の高い大型GKの守田達弥(←松本山雅)も開幕からスタメン出場を果たす可能性は十分ある。新卒の選手では大企業からの内定を辞退してプロでの挑戦を決めた森下龍矢(←明治大)が即戦力として高い期待を背負っている。大学時代はウイングバックが主戦場になるなど、非凡な推進力が魅力で、躍進の大きな力になりうる。また鳥栖が力を入れているアカデミーからはMF本田風智がサイドアタック主体のチームに攻撃の創造性を与えうるタレントだ。

■大分 B

 昨シーズン10得点のオナイウ阿道が浦和にレンタルバックされ、そこからJ1王者の横浜FMに移籍したのは痛いが、川崎から期限付きで加入したFW知念慶は十分に穴を埋められるタレントだ。昨シーズンのJ3で17得点を記録し、群馬のJ2昇格に大きく貢献した高澤優也、前線での機動力に優れる渡(←広島)と新加入のFWはタイプが異なり、シャドーのポジションで併用することも可能だ。

 引く手あまただったMF小塚和季の慰留に成功した上に、野村直輝(←徳島)、町田也真人(←松本山雅)という技術とセンスの高いMFを獲得したことで、中盤に関してはJ1でも上位の充実度となっている。

 また片野坂知宏監督が掲げる長短のパスワークを駆使した幅広い攻撃をさらにレベルアップさせるキーマンになりそうなのが香川勇気(←長崎)だ。左から上下動するだけでなく、組み立てからクオリティを加えることができる。正確な長短のパスと決定力の高いミドルシュートで中盤から甲府の攻撃力を高めた佐藤和弘、同じく甲府で最終ラインを引き締めた小出悠太の補強も的確だ。

 評価はBとしたが、大分の資金力を考えれば限りなくAに近く、昨シーズンの9位をさらに上回る結果を残す期待は十分だ。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才能”」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行