■清水 D

 横浜FMのヘッドコーチとしてリーグ優勝を経験したピーター・クラモフスキー新監督のもとで、全く新しいスタイルにチャレンジする。残留を最低ラインにチームのベースを作っていくシーズンになることは間違いないだろう。エースのドウグラスが神戸に去った穴を完全に埋めることは不可能に近いが、広島でJリーグ経験もあるタイ代表FWティーラシンは計算でき、2年目のジュニオール・ドゥトラもチームメートと特徴を理解しあっていることは大きい。

 最終ラインは“3人キャプテン”の一人に就任したU-23日本代表のDF立田悠悟にも期待がかかるが、同じくU-23日本代表の岡崎慎(←FC東京)、神出鬼没のDF金井貢史(←名古屋)、奥井諒(←大宮)、DFヴァウド(←セアラーSC)といった実力者が加わり、GKもブラジル人のネト・ヴォルピ(←アメリカ・デ・カリ)を獲得。クラモフスキー監督の評価次第でディフェンシブなポジションのスタメンがガラッと入れ替わってもおかしくない。

 従来の戦力と新加入選手が競争しながら新しいスタイルの中でどう組み込まれていくのか。そこから夏の移籍市場、さらに来シーズンとチームの完成度を上げるために必要な補強も見えてくるはずだが、残留が大前提になる。

■名古屋 C

 移籍市場での初動は遅めだったが、FW山崎(←湘南)、阿部浩之(←川崎)、稲垣祥(←広島)というストロングポイントの明確なタレントをピンポイントで加えた。

 さらに期限付きで移籍していたマテウスがリーグ王者の横浜FMから、U-23日本代表の相馬勇紀が鹿島から復帰。前田直輝を含めて、サイドアタッカーを生かすスタイルをキャンプから構築している。ただ、ケガで出遅れている選手もおり、FW山崎もキャンプ中に負傷、FWジョーもキャンプに不参加など、開幕に向けて理想的なチーム作りができていない部分もある。

 ただ、チャンスメイクとゲームコントロールの両面に優れる阿部を攻撃の主軸としたビジョンの共有はチーム内で早くもできており、高いボール奪取力を誇る米本拓司と稲垣のコンビがサポートする中盤のファーストセットをベースにサイドアタッカーが躍動するスタイルがハマれば前半戦の主役になっていく可能性もある。そのためにも前線の配置は確立したいが、前田がスタートから1トップを担う布陣は無理がある。やはり本職の1トップを置きたいが、山崎やジョーの状態が気になるところだ。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才能”」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行。