──小学生なのにヒジを痛めて手術をするケースが後をたたないなど、「練習のやりすぎ」が問題になっています。

 体ができていない子どもが必要以上の激しい練習をすれば、ケガをするのは当たり前。プロ野球経験者で、小学生の球数制限を否定する人はいません。極端な話、小学生は練習はほどほどでいいと思っている。子どものころはもっと野球を楽しんでほしい。

──高校生でも、投手の投げすぎが問題になっています。

 連投してもケガをしない投手もいます。そういう人たちの話をもっと分析してほしい。なのに、すぐに球数制限の議論になる。個人差や環境も考えないといけません。

 たとえば連投が問題なら、予選はリーグ戦にして、甲子園の出場校数は30チーム程度に減らせばいい。甲子園球場は阪神が本拠として使用しているので、日程に制限がつけられるのは避けられない。であるなら、日程に余裕を持たせればいいだけの話です。

 そもそも、一人の監督やコーチが、投手も打者も教えているチームがほとんどです。これでは故障者が出るのは仕方がない。日本には知識と経験のあるプロ野球のOBが数千人いるのに、まだまだアマチュアの指導者が少ない。元プロが子どもたちに野球を教えることで、すべてではないが、変わることもたくさんあるはずです。もっとうまく連携して活用してほしい。

 いろんな解決策があるんです。たとえば、高校野球が打者優位になっているなら、投手が有利になるようにストライクゾーンをボール1個分広くするとか。これだけで投手の負担は格段に減ります。

 もちろん、プロを目指す投手にとっては、広いストライクゾーンに慣れすぎると高校卒業後に苦労します。飛びすぎる金属バットに慣れてしまった高校生が、プロに入ってから木製バットに順応するまで時間がかかるのと同じです。すべての問題を解決する一つの方法なんてものはありません。バランスを考えながらやっていくしかないのです。バットやボールの性能、マウンドの傾斜など、総合的に考えないといけない。

次のページ
野球が面白くなるための議論を