中山:10年前、研修で3カ月間皮膚科にいました。そこでメラノーマを勉強したのですが、おっしゃるとおり非常に生命予後が悪い。患者さんとの関係性のつくり方もずいぶん違うのかなと思います。

大塚:私は、ほかのがん種の経験をしていないのでわからないのですが、メラノーマは比較的若い方が多いです。20代30代で、出産後に子宮や膣のメラノーマが見つかったという患者さんも珍しくない。いくら緩和ケアが進んだとしても、20代の方に「治りません、あとの生き方を考えてください」とは言えない。それに、大学病院は患者にとって最後の砦(とりで)なんです。ほかの病院でできませんと言われてきた人が、最後に来る。それで、こちらでなにかできないかと方策を探すのですが、場合によってはそれでもどこかで「負けに転じる瞬間」があるじゃないですか。             

中山:ええ。

大塚:これ以上、積極的な治療をするのではなく、緩和ケアに移行するタイミング。そこが……つらいですよね。死というものを考える段階にない人たちに、どのようにして緩和ケアまで寄り添っていくか。おそらく年配の方に接するのとは違う、大きな点です。答えはいまだに出ないですが。

中山:それは本当に難しいですね。大腸がんも40代以下の、いわゆるAYA(Adolescent and Young Adult)世代と呼ばれる方の患者さんがたまにいます。本当に打つ手がなくなったらそのままお伝えするのですが、その場合、ほかの代替医療を模索する人がほとんどです。とはいえ、私はほかの代替医療を検討することを止める気はないんです。ただ高額すぎるものに手を出すのはよくないですし、なんなら一度その治療法について相談してくれればいい。そんなふうにして関係性が途切れないようにすることが必要だと思っています。

※週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院2020」から