勝谷にいじめられた和田を、中田が助けたことになっている。

 和田と勝谷は大人になっても、和解することはなかったようだ。とくに和田は勝谷を避けており、灘の同窓会にも出なかった時期がある。かつて自身のブログでこうつづっていた。

「一二度、テレビで共演した時もほとんど会話をかわさなかった。もともと仲がよくないのだ。(略)勝谷氏が欠席が確実な同窓会なら必ず出るので、もし私が出てもいいのなら誘ってほしい。残りの誰一人に対して私は悪意をもっていない」(2010年12月5日)

 一方、和田と中田は小学生時代から中学受験の塾が一緒だったことがあり、とても仲が良い。いまでもときおり対談を行っている。

『灘校物語』では小学生のナガタがニーチェを語っており、いまの中田考を彷彿させる。

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「僕は灘に入るという目的があるから、つまらないと思っても、テストを受け続けているんだ。ニーチェも『目的を忘れることは、愚かな人間にもっともありがちなことだ』と言っているからね」
「ニーチェ」という名前が授業のどこかに出てきたかと、ヒデキは考えあぐねた。ヒデキは、父親も母親も無教養な家庭に育ったこともあり、その有名な哲学者の名前をまったく知らなかった。(15ページ)
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 ナガタは灘に入るとその知性にさらに磨きをかけた。ヤダにこう話しかけた。

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「(略)ショーペンハウエルだって、『本当の幸せを楽しむ能力のない人間が、金がすべてになってしまう』と言ってるよ。逆に言えば金がすべてになってしまうなら、幸せを楽しむ能力がなくなってしまう。今、僕らに欠けているのは幸せを楽しむ能力だと思わない?」
 ショーペンハウエルが誰だかヒデキにはわからなかった。(略)
「サルトルだって、自由とは、自由になるために戦う自由な選択以外の何物でもないといってるよ。僕も、教師の強かった時代なら、高校に上がるときに強制退学になっていたかもしれない。だから、今回は闘うことにしたんだ」(224~225ページ)
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