「東京オリンピックでも、麻疹や風疹(ふうしん)が流行する可能性があります。気温と湿度が高くなれば新型コロナウイルスの活動は弱まると思われますが、開催時期の真夏は、南半球では冬。南半球で流行しているインフルエンザウイルスなどが日本に持ち込まれ、感染が拡大する可能性もあるでしょう」(吉田教授)

 そこで日本感染症学会と日本環境感染学会は昨年12月、マスギャザリングに向けた感染症予防プロジェクト「FUSEGU2020」を発足させた。手洗いといった基本的な予防法のほか、感染症のリスク評価、麻疹や風疹などワクチンがある感染症の予防接種を推奨する活動などをしている。

 感染症の拡大を防ぐには、個人が正しい知識を持つことが不可欠だ。吉田教授は言う。

「まず、感染症にかかったと思われる時は、電話をしてから病院に行ってください。受付時に院内で感染が拡大することを防ぐためです。また、感染源と思われる外国人と一緒にいた場合は、そのことも正確に伝えてほしい。そして、症状を感じた人は、人が集まる場所に行くことを控えましょう。今回の新型コロナウイルスも同じで、たとえ感染が拡大しても、日本の医療体制であれば十分に対応できます。パニックにならず、公的機関などが発表する正確な情報を知るようにしてください」

 感染症対策をめぐって中国に対する批判が拡大し、株価下落や生産活動の停滞など、経済にもマイナスの影響が出始めている。無警戒はよくないが、過剰に反応する必要もない。“正しく怖れること”が重要だ。

(AERA dot.編集部・西岡千史)