あのね。今まだ晩酌してないからね。まだシラフだからね。喫茶店でシラフで書いてるからねコレ。もう、こうなったら開き直って更に役に立たない情報を書きなぐりますと、妻が作ってくれる酒の肴で僕が好きなのは、「豆苗とセロリとエノキの肉巻き」「キャベツと生姜と青のりの卵焼き」「鶏肉の柚子胡椒焼き」「白身魚の唐揚げ」「牛肉とレンコンの豆板醤炒め」……ちょ、助けて。もう喫茶店でコラム書いてる場合じゃない。帰りたい! 早く家に帰って晩酌したい! 助けて! 誰か助けて!

 ひとまず落ち着きましょう。誰の役にも立たないことを勝手に書いといて取り乱してる場合ではありません。上記メニューは、いずれもその日の晩酌のメインメニューでして、いわゆる晩メメでして(←大概にしろよ)、サイドメニューといたしましては、「肉じゃが」「オクラとササミのおひたし」「大根の梅マヨサラダ」「ほうれん草とベーコンのガーリック炒め」「カイワレとカニかまのサラダ」……ちょ、ごめん、息ができない。正直すでに気持ちはここにない。気持ちは喫茶店にない。家。気持ちの8割はすでに家。つうか食卓。もはや気持ち的にはほとんどビールの栓を抜いてる。

 これら夢のようなオールスターキャストの料理に合わせ、ビール、焼酎、日本酒、ウイスキーなどなど、愛する酒をピックアップ。呑み方もその日の気分でストレート、ロック、水割り、お湯割り、ソーダ割、ごめん、無理。帰る。もう、僕チンおウチに帰る。さっき妻にメールで今夜の晩酌メニューは「豚肉とキャベツの卵炒め」という確認も取れてるし、あの、だから、あの、さようなら。(文/佐藤二朗)

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佐藤二朗

佐藤二朗

佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家、映画監督。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や映画「幼獣マメシバ」シリーズの芝二郎役など個性的な役で人気を集める。著書にツイッターの投稿をまとめた『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)などがある。96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がけ、原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)がBD&DVD発売中。また、主演映画「さがす」が公開中。

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