日本でもフランスでも、外とつながるにはきっかけが必要です。彼らはひきこもってゲームに張り付いていても、ニュースをチェックしていたり、パソコンを通して外の世界を観察していることがあります。一見、すべてを閉ざしているように見えますが、それぞれに小さな接点が必ずあります。そこを見つけてつなげてあげれば、外へ出るきっかけになるかもしれません。例えば、ゲームが好きなら、誰かとつながるようなオンラインゲームをやってみないかと提案する。ゲーム内のチャットや掲示板を見ているだけなら「ちょっと書き込みもしてみたらどう?」と言葉をかけてみる。その一言で、本人は外へと動いていきます。

 私の訪問を受け入れてくれたある男性は、10年近くひきこもり、毎日15時間もゲームに費やす状態になっていました。やり方を詳しく聞いてみると、ゲーム内でコメントを書き込んだりせず、他のプレーヤーたちのやり取りを見ているだけでした。

「これだけやっていたら、すごく知識があるでしょう? 書いてみたらどう?」とアドバイスすると、攻略のコツやゲームに関する情報を書き込むようになり、プレーヤーからコメントをもらったり、ネット上の友だちができたりするようになりました。彼はその後、外出も増えました。

 こういった方法は日本での臨床経験がベースにありますが、本人の生き方を認めて外につなげていくという方法はフランスで教えられたものです。フランスを中心としてヨーロッパの各国を行き来しながら、ひきこもりにとってよりよい生き方を模索しています。