若い世代に届けるためにも、本当に伝えたい情報はスマホで読みやすいように文字に大小や色をつけたり、アプリをつくったりと試行錯誤しているという
若い世代に届けるためにも、本当に伝えたい情報はスマホで読みやすいように文字に大小や色をつけたり、アプリをつくったりと試行錯誤しているという

 昨今、入試のあり方で問題視される医学部受験。しかし、「多くの命を助けたい!」と思う若者や、「子どもを医者にしたい」と願う家族は多いもの。『医者と医学部がわかる2020』(朝日新聞出版)では、初年度と6年間の学費・志願者合格倍率・医師国家試験合格率の最新データを集めた「ひと目でわかる医学部データ」を掲載。医師528人に聞いた「医師のホンネ」では、勤務・睡眠時間や年収、結婚した年齢までを網羅し、役立つ情報が満載だ。

今回は「医師×テクノロジー」という企画から、ブログについて紹介する。

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 ネットの時代、情報の発信は容易になった。医師たちもブログやツイッターなどのSNSで配信することで、信頼性のある情報も増えてきている。

「最近、小説を書いているんです。新人賞に応募したら、2次審査を突破しました。どうしたら賞をとれるでしょうか?」
 
 そう話すのは、千葉県我孫子市で産婦人科のクリニックを開業している遠藤周一郎医師。アメブロ「産婦人科医きゅーさんが伝えたい事」で産婦人科関連の情報を発信しているブロガーでもある。

 ブログはテンポよく親しみやすい文章でありながら、産婦人科医ならではのリアルで説得力のある投稿で人気だ。婦人科系や妊娠関連の情報からわが子を取り上げたエピソード、開業関連の話題まで、幅広く投稿して
いる。ツイッターでは、最近話題のニュースにも切り込むという。

■検診で早期発見! 自分の体をもっと知ってほしい
 
 もともと文章を書くのは得意ではなかったが、「ブログを書いているうちに、読者の反応がある文章がわかるようになってきました」と笑う。

 遠藤医師がブログを始めたのは大学院生のとき。大学院に入る前は、大学病院の産婦人科で不妊治療からお産、がんの手術まで幅広く担当していた。
 
「婦人科系は、比較的若い年代で発症する病気が多く、若いうちから知識を持っていたら防げる病気が少なくありません。例えば子宮頸がんはワクチンで予防できますし、検診で早期発見できます。不妊症の患者さんはもっと若いうちから受診していたら、妊娠しやすかったのにと感じます。若い女性ほど、自分の体のことを知らない。こうした情報をできるだけ届けたいと思っていたんです」
 
 ブログの読者は増えたが、本当に伝えたい情報ほど、若い世代にはなかなか届かない。スマホで読みやすいように文字に大小や色をつけたり、ア
プリをつくったり、試行錯誤している。

■炎上も数回経験、個人情報の扱いに注意
 
 ブログを開設してから7年、ツイッターを始めてから3年半。書きたいときに書く、つぶやきたいときにつぶやく、ラフなスタイルだからこそ、長続きしている。ツイッターでは何度か炎上も経験した。

「本意とは違う解釈をされたときに炎上するんです。最近は炎上しそうになったら早めに本意を伝えて対処するようにしています」
 
 医師はその肩書だけでフォロワーがつきやすいという。なかには失言するのを虎視眈々と待っているようなフォロワーもいる。

「SNSなどを使う際の個人情報の扱いは、どこから特定されるかわからないので、十分注意してください。アカウントを持っている医学部生は多いと思いますが、医師免許をとる前の失言は、未来を変えてしまうような大きなリスクがあると思います」

 このように、急速なICTの発展などにより、医療と医師のあり方は大きく変わってきている。AIというと必ず「人間が必要なくなるのでは」と言われるが、そうではない。機械にできることは機械に任せ、人間は判断をして、高度な技術を発揮する。テクノロジーを利用し、人間にしかできないことを追求していくのが今後の医師の姿といえるだろう。(文/ライター中寺暁子)

遠藤周一郎医師(えんどうしゅういちろう)/2006 年順天堂大学医学部卒。08 年同大産婦人科学講座入局。15 年同大大学院卒業。16 年順天堂大学浦安病院助教に。17年遠藤レディースクリニック開業。著書に『産婦人科医きゅー先生の本当に伝えたいこと』(KADOKAWA)