高梨沙羅 (c)朝日新聞社
高梨沙羅 (c)朝日新聞社

 全24戦を戦った昨シーズンのW杯は、優勝1回を含む表彰台10回で総合4位になっていた高梨沙羅。今季は第9戦までを終えた時点で総合は4位だが、表彰台は開幕リレハンメル大会第2戦の3位と、第6戦蔵王大会の2位だけ。だがその表情に焦りはない。

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「去年は本当にまっさらのところから始めたので、何が正解なのかを自分でもよくわからないまま飛んでいました。でも今はある程度自分が目指すところがどういう感じかというのが絞り込めて、方向性も見えつつあるので、そこに向けて今できることからつなげているような感じです」。

 昨季の高梨は踏切では、上体が上向きに動くような感じが出ていた。平昌五輪シーズンからパワーのある選手の技術が上達してきたことで助走速度も落ち、自分もパワーを付けなければいけないと考えるようになっていた。踏切でジャンプ台にインパクトを伝えることを意識することで、かつてのような一発で空中姿勢に入る鋭い飛び出しが出来ず、上体が先に動いてしまうようになっていたのだ。

 その傾向は今シーズンの開幕戦の映像でも少し見えていた。その頃の高梨はアプローチの滑りを安定させることを最重要課題と考え、滑り出しから踏み切るまでの滑りを意識していたのだ。

 だが1月に入ってからのW杯札幌大会では、その踏切がスムーズになり上体をあまり動かさない飛び出しが出来るようになっていた。高梨は「年末年始は地元に帰ってミディアムヒルやノーマルヒルで練習をしたが、そこでスタートの切り出し方をちょっと変えてみたが、それが上手くハマりつつあるかなという感じです。アプローチ自体はコーチからもうまく乗れてきていると言ってもらえているので、今の組み方で行こうかなと思っています」と話していた。

 とはいえ、トップとはまだ若干の差はある。今シーズンの世界の勢力図を見れば、W杯総合2連覇中のマーレン・ルンビー(ノルウェー)は健在だが、昨シーズン2位だったカタリナ・アルトハウスとユリアネ・ザイファルトのドイツ勢は少し出遅れ、その代わりに夏場にケガ人が出なかったというオーストリアがチーム全体で好調。これまでW杯勝利がなかったエヴァ・ピンケルニッヒとキアラ・ヘルツェルが3勝と2勝をあげてW杯総合で2位と3位につけている他、第4戦の札幌大会では18歳で今季本格参戦のマリタ・クラマーが優勝とチーム力をつけている。ともにしっかりジャンプ台に力を伝える、安定した踏切をしているのだ。

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「ジャンプはまとまってきた」