また、大坂は2年前ぐらいからミスを減らすために時速200キロのファーストサーブを打たなくなった。大坂のファーストサーブは、ガウフと同じように時速180キロ台がコンスタントに出るが、このスピードだけでもほとんどの女子選手と比べれば優位に立てる。そのため無理に時速200キロのファーストサーブを打つ必要はなくなった。実際ガウフとの3回戦では、大坂のファーストサーブでのポイント確率は74%で悪くなかった。

 問題はセカンドサーブだ。ファーストサーブと違って、大坂に大きなアドバンテージはない。特にガウフ戦では、時速130キロ台のセカンドサーブでコースも深さも甘く、ガウフにリターンを強打されて先手を取られ、セカンドサーブでのポイント獲得率はわずか33%に留まった。

 今後、大坂のセカンドサーブはフィセッテコーチと取り組むべき改善点に挙げられる。他の選手による大坂対策に屈しないためにも、セカンドサーブの改良と戦術をフィセッテコーチと取り組み、大坂もさらにレベルアップしなければならない。

「私がウィムとまず目指すべきメインゴールは、トーナメントで優勝することであり、グランドスラムで優勝することです。彼も同じことを感じていることを確信しています。私たち2人は、すごく似たようなビジョンを持っています」

 大坂は、フィセッテコーチと一緒なら、再びグランドスラムタイトルを奪取できると思えたからこそ新しくタッグを組んだのだ。

 昨年の全豪優勝のランキングポイント2000点のうち、今回は130点しか守ることができなかった大坂は、大会後にWTAランキング4位から11位前後に落ちてトップ10陥落の可能性も秘めている。

 世界の頂点を目指すために出直しとなる大坂だが、フィセッテコーチと共にセカンドサーブをはじめ、たとえ100%のコンディションではなくても勝ち続けられる粘り強いテニスと、トッププレーヤーであり続けるための強靭なメンタルを身に付けていく必要がある。2020年シーズン、再びグランドスラムの優勝争いをするような大坂の巻き返しに期待したい。(文・神 仁司)