企業が発表する決算書は、大きく「損益計算書」「貸借対照表」「キャッシュ・フロー計算書」の3つの書類で構成されています。財務三表ですね。

 このうち損益計算書は「1年間で出た利益と損失」が書かれているのに対し、キャッシュ・フロー計算書には「1年間の現金(キャッシュ)の出入り」が記録されています。つまりこれを読めば、会社が「何で、どれだけの現金を得たか」、また反対に「何に、どれだけの現金を使ったか」が、正確にわかるのです。

 そして質の良い利益とは、将来予測ではなく、実際に現金の裏づけ(キャッシュ・フロー)がある利益と言えます。それを一発で確認できるのが「利益キャッシュフロー比率」です。これは私がつけた呼び方で一般的ではないですが、「会社が得た利益のうち、どれだけが現金を伴っているか」を表す数値です。

 計算方法はいたって簡単。キャッシュ・フロー計算書に書かれている「営業キャッシュ・フロー」を、損益計算書に書かれている「営業利益」で割るだけです。この数値が小さいほど、利益に対してキャッシュの入りが少ない、つまり結果ではなく「予測の利益」の比率が大きいことになります。

 試しに、18年度末決算書から、ソフトバンクGの「利益キャッシュフロー率」を計算すると「49.8%」と出ました。比較対象として、18年度に同程度の営業利益を出したトヨタ自動車の数値を計算すると「153%」。

 この結果から、ソフトバンクGの利益の約半分は「現金を伴わない(帳簿上の)利益」が占めていることがわかります。対してトヨタ自動車は、現金流出のない多額の減価償却費があるために利益以上にキャッシュが入っているのです。

■意見に乗るのか、事実だけを見るのか

 会計の世界には、「利益は意見、キャッシュは事実」という金言があります。利益はある程度作ることができるが、キャッシュ(現金の出入り)はごまかすことができない。だから、企業の実態を見極めたいのであればキャッシュを見よ、ということです。

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一方で…