ソフトバンクグループ(以下、ソフトバンクG)の決算発表は、なぜ毎回、議論を巻き起こすのか。その特異な利益構造を読み解き、上辺の数字に「騙されない」分析法について、『100分でわかる!決算書「超分析」入門』シリーズの著者・佐伯良隆氏に聞いた。

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「今回の決算発表、ボロボロです。まっかっかの大赤字……」

 昨年11月、決算説明会の冒頭で孫正義社長自身がこう発言したとおり、ソフトバンクG19年度Q2(7月~9月)の最終損益は7002億円の赤字。また、19年度中間決算(4月~9月)の営業利益も、155億円の赤字となりました。

 ことさら衝撃度が大きかったのは、同社が前年度の決算で過去最高益を叩き出していたこともあるでしょう。ソフトバンクGの18年度の営業利益は2.35兆円。17年度の営業利益は1.3兆円ですから、わずか1年で1兆円以上もの増益を達成していたのです。

 それが今年は(まだ半期ですが)一転して営業赤字に転落。たった1年で、1兆円単位の稼ぎが増えたり消えたりするのは、普通の会社では考えられないことです。ではなぜ、ソフトバンクGは、これほど利益の振れ幅が大きいのでしょうか?

■4兆円が吹き飛んだ、孫社長の“誤算”

 同社が赤字に陥った要因として指摘されているのが、「ウィワーク社に対する投資の見誤り」です。

 ウィワーク社は、アメリカ・ニューヨーク市に拠点を置くコワーキングスペースの提供会社。ソフトバンクGは、子会社やファンドを通じ、同社に103億米ドル(約1.13兆円)を投資していました。

 ところがウィ社は、昨年9月に収益の安定性に対する疑義を指摘され、当初より目指していた株式上場を延期することを決定。これにより事業計画の大幅な見直しを迫られ、ウィ社の企業価値は470億ドル(約5.17兆円)から78億ドル(約8580億円)まで、4兆円以上も減損されたのです。

 同社に多額の投資をしていたソフトバンクG社も、当然その影響を免れず、19年度7月~9月期の決算短信では、ウィ社やウーバー社など投資先の企業価値が減少したことで、約9703億円もの営業損失を計上したことが報告されています。

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売上が増えなくても、利益が爆増するカラクリとは?