さらに、その26年後にもまた悲劇が。NHK朝ドラ「あまちゃん」で彼女の歌がネタにされたのだ。

 それはヒロインの母親・春子がかつてアイドルを目指していた頃、喫茶店のテレビでおニャン子の歌が流れ、マスターが「4番より春ちゃんのほうが上手いしさ」と指摘するというもの。この場面を見ていた新田はブログに、

「じぇじぇじぇッ !!私のこと~っ そりゃ、確かに上手いとは口が裂けても言えないが…(略)私とどっこいどっこいのメンバーは沢山いたぞっ!」「なのに、何で私なの!?思わず朝から胸がズキッ。そして1人で苦笑い?泣き笑い?」

 と書き、こう続けた。

「脚本家の(宮藤)官九郎さん。お会いしたことはありませんが……、27年経っても官九郎さんの中での歌が下手なおニャン子は私なんですね、とほほ」「今もあの頃と声も歌唱力も変わってないけどね」

 しかし、こうして長年、象徴的に語り継がれていること自体、すごいことだ。ちなみに、彼女の前年、同じ事務所からデビューしたのが本田美奈子。前出の「本当に歌のうまいアイドルは誰だったのか」のなかで、事実上の主人公としてとりあげた歌手だ。「歌ウマ」でも「ヘタウマ」でも、レジェンドというべきアイドルをほぼ同時に輩出したボンド企画は、事務所としてのレジェンドである。

■原田知世、森尾由美、SPEED上原多香子

 さて「ヘタウマ」ぶりで注目されたアイドルはまだまだいる。

 浅田同様、NHKのオーディションに何度も落ちたニューミュージックのヘタウマ・松任谷由実が名曲を提供した原田知世だったり、男性アイドル史に残るビッグなヘタウマ・田原俊彦と同じスタッフが手がけた森尾由美だったり。また、音痴を自認していた後藤久美子が歌手活動を渋った際、周囲が彼女の大好きだった高見沢俊彦に曲を書かせることでデビューにこぎつけたという話もある。

 90年代に入ってからも、吉川ひなのや山田まりやはなかなかのものだったし、この時期には鈴木あみや上原多香子もかなりの威力を示した。

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剛力彩芽が歌ったデビュー曲