さらにポイントなのが、ちゃんと名前をいれること。「〇〇くんはすごい」と付け加えるだけで、認められたという思いはぐんと大きくなります。

 また、「オモチャの取り合いをやめなさい」と命令口調で押し付けるように言うのではなく、「お母さんはあのオモチャで遊ぶのが楽しいと思うな」と、主語を「私」に変えて、自分の意見として伝えるほうが効果的です(あのオモチャは、ブロックなどたくさんあって取り合いになりにくいものにする)。

 人間は、「こうしなさい」と強制されると、逆にやりたくなくなる「心理的リアクタンス」という性質をもっています。勉強しなさいと言われて、「うん、わかった」とすぐに始める子どもなんてみたことないでしょう。

 そこで「こうしてほしいな」というニュアンスに言い換えることで、無理にやらされるのではなく、自分で行動を選択したというスタンスにもっていけます。それに、「けんかするな!」と怒るより、「ママはけんかされると悲しい気持ちになる」と伝えるほうが、相手に「今後気をつけよう」と響くものです。

■親も一緒に遊んで、子どもにまねをさせる

 そして、人間は「同調行為」といって、無意識のうちに人のまねをして一緒の行動をしやすいという性質があり、特に、好意をもっている相手のまねをする傾向があります。

 それを利用して、「お母さんとみんなでブロックしよう」と、全員で一緒にやり始めるのです。単に「けんかをするならブロックで遊んで」と言うよりも、ずっと素直に行動に移してくれるでしょう。

 そして、子どもたちが夢中になり始めたら、自分は静かに脱け出して、そっとお風呂掃除に戻り、自分の作業を再開するのです。

 子どもはけんかしているときは、どちらも真剣に怒って泣いたり怒鳴ったりしていますが、少しするといつの間にか笑いあって仲良く遊んでいるものです。

 何度もバトルが始まると、イライラして、頭ごなしに叱ってしまいたくもなると思いますが、うまく心を操作して、親子ともストレスを少なくしていきたいですね。

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杉山奈津子

杉山奈津子

杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』『「うつ」と上手につきあう本 少しずつ、ゆっくりと元気になるヒント』など。ツイッターのアカウントは@suginat

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