■主電動機(モーター)を小型化し台車も改良

 6極の主電動機を採用したことで大きく変わったのが動力伝達装置だ。動力の伝達は主電動機側の小歯車から、車軸に取り付けられている大歯車にWN継手を介して伝達される。N700Aまでは、この歯車にハスバ歯車が用いられていた。ハスバ歯車は漢字では「斜歯」と書き、歯車の歯が斜めに切ってあるものだ。

 これに対してN700Sではヤマバ歯車が採用されている。ヤマバ歯車は漢字で「山歯」と書き、歯の向きが逆なハスバ歯車を2枚貼り合わせたような形状となったものだ。ハスバ歯車ではトルク伝達の際に車軸方向のスラスト力(推力)が作用するため、軸受にスラスト力を受ける機構が必要となる。ヤマバ歯車はスラスト力が発生しないため、軸受の保守省力化と信頼性向上が図られている。ヤマバ歯車は歯車自体の厚みの寸法が増すが、6極主電動機の採用によって、主電動機も重量で70kg、回転軸方向の寸法が70mm小さくなったことで実現できたものである。

 この保守の省力化はN700Aの台車設計において、「軽量化」と「高機能化」と併せた3つの重点項目とされたもので、それぞれが密接に関わっている。N700Sは従来からの台車枠に対して大幅な設計変更が加えられている。従来はプレスによってモナカ型に成型した台車枠を溶接で組み立てていたが、N700Sではハット形にプレスした上部主部材と、板状の下部主部材の組み合わせに変更した。

 この組み合わせにすることで内部の補強が不要になり、従来型ではおおよそ6本あった溶接線が2本となり、製造工程の簡略化と信頼性の向上、軽量化が達成されている。また、台車強度の変更などがあった場合は、下部主部材の厚みを変更することで強度変更が可能となるなど、冗長性も増している。主電動機の小型化と装備部品の艤(ぎ)装見直し、台車枠の軽量化などが相まって、厚みのあるヤマバ歯車の採用が可能となった。

 台車には「台車振動検知システム」を実装。これは主電動機や車輪などの回転機器から発生する振動を検知し、故障や部品の破損が発生する予兆を捉えるものだ。N700Aから実装されていた機器だが、N700Sでは機能向上が図られている。

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