足立:販売促進という文脈でいえば、考えやすいのは流通を広げることによる新規ユーザーの開拓ですよね。認知しているけどまだ買っていない人を獲得するために、たとえば、スーパーマーケットでしか販売していなかったものをディスカウントストアにも広げるとか、新しくネット通販をはじめてみるとかすると、新しいユーザーにリーチできるので、ユーザーの裾野が広がる可能性があります。

西口:「顧客起点」から言うと、クリエイティブもメッセージも、チャネルやメディアごとにカスタマイズして変えていくべきなんです。そうすると、売り上げを上げていくのって、実はそんなに難しくないじゃないですか。

足立:そうですね。では、どうしてそんな縮小均衡にしかならないような「ブランディング信仰」ができてしまったんでしょうか。

西口:経営者とマーケターが自社ブランドを大好きになっていて、自分たちがブランドに持つそのイメージを訴求したくなる、顧客とは関係ない偏愛ができるからです。「ブランド・エクイティだ!」とか言って、自分たちが気持ちいい、これまでと同じようなブランド訴求をし続けるから、新しいユーザーは来ないわけです。ブランドを認知していても買わない人は、もう一回同じようなメッセージが来ても、ますます買わない意思を固めるだけじゃないですか。

足立:「このブランドは、私には関係ない」と思い続けるだけです。

西口:本当は、自分たちがやってきたブランディング以外のところに、自分たちがブランド価値だと思っているもの以外のものに、新規ユーザーを取り込むチャンスがあるわけです。単純な話だと思うのですが。