他にも、豆まきの煎り大豆や枝豆も、ピーナッツと同様に誤嚥の原因となったケースの報告があります。さらに、ナッツや豆類を砕いて与えても、その破片が気管に入り肺炎や気管支炎を起こしたケースが報告されています。ナッツや豆類は、細菌性の肺炎や気管支炎だけでなく、その油分により直接肺や気管支に炎症を起こしてしまうことがあるのです。

 気管・気管支異物のリスクが高いのは、1~2歳の子どもです。たとえば1991年に中国から発表された報告では、400例の症例をまとめています(※2)。このうちおよそ9割は3歳未満の幼児で、1~2歳の間がピークでした。このような報告から、誤嚥を起こしやすい3歳頃までの間は、そのままの形状、または砕いた状態でもナッツや豆類を与えるのは避けることが勧められています。与えるなら、粒の残っていないペースト状のもの、例えばピーナッツペーストやフムスが良いのではないかと思います。

 節分の豆まきは落花生派の地域と大豆派の地域がありますね。東北地方で働いていたとき、最初は落花生を撒くことに驚きましたが、拾いやすいく食べやすい落花生を撒くのはなかなか合理的だなと感じました。しかし誤嚥を考えると、どちらの場合も、小さい子どもがいるご家庭ではリスクが高いです。我が家でも、豆やナッツを小袋のまま撒くか、お菓子で代用するか、どちらかにしようと考えています。小さい子どもが豆やナッツを食べないよう、十分に注意していただければと思います。

※1.  浅井正嗣, 足立雄一, 中川肇, 木村寛, 板澤寿子, 和田倫之助, et al. 小児の気管・気管支異物症例の検討. 日本気管食道科学会会報. 2007;58(1):64-70.
※2.  Mu L, He P, Sun D. Inhalation of foreign bodies in Chinese children: a review of 400 cases. Laryngoscope. 1991;101(6 Pt 1):657-60.

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森田麻里子

森田麻里子

森田麻里子(もりた・まりこ)/1987年生まれ。東京都出身。医師。2012年東京大学医学部医学科卒業。12年亀田総合病院にて初期研修を経て14年仙台厚生病院麻酔科。16年南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。17年3月に第一子を出産し、19年9月より昭和大学病院附属東病院睡眠医療センターにて非常勤勤務。小児睡眠コンサルタント。Child Health Laboratory代表

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