家は貧しく、日々の暮らしはいつも逼迫(ひっぱく)していました。いつか東京に戻れる日は来るのだろうか。そんなことを考えて、暗い気持ちになることがなかったと言えばうそになります。ただ私は自分の毎日を「いやだ」と思ったことはありません。毎日に不満を言い始めたら、つまらないことだらけです。

「うちはお店もなくなってしまって」
「うちはお金もなくなってしまって」

 それを口にして状況が変わるのなら、私もそうしたかもしれません。でも不満を口にしたところで何ひとつとして状況が変わらないのなら、そんなことに時間を割いて、自分で自分を落ち込ませることはないのです。

「毎日毎日がおもしろい」
「新しいことを知って、ひとから習った以上のことができるようになるのはこの上なく痛快」
「探求心を強く持つということで、開ける道はあるはずだ」
「手に職。手に職さえあれば、いくつになっても生きていけるはず」

 私は給仕をしながら、日々そんなことを考えていました。

 毎日というものは、本当にそのひとのこころの持ち様によって変わってきます。つまらないと思えば、どんなことだってつまらないでしょう。でも同じことでもおもしろいと思えばいくらでも、そこにおもしろさは見つけられるはずです。

 毎日を、ふてくされて生きるのか、それとも笑って生きるのか。

 同じ時間を生きるのであれば、笑って生きるほうが楽しいに決まっています。

 そう思いませんか?

【しなやかに生きる知恵】
つまらないと思えばなんでもつまらない
おもしろいと思えばなんでもおもしろい

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小林照子

小林照子

小林照子(こばやし・てるこ)/美容研究家。ヘア&メイクアップアーティスト。1935年、東京都生まれ。東京高等美容学院を卒業後、小林コーセー(現・コーセー)に美容部員として入社。数々の大ヒット商品を手掛け、85年、同社初の女性取締役に就任。その後独立・起業し、美容ビジネスの企業経営や後進を育てる学校運営をおこなっている。『人生は、「手」で変わる。』(朝日新聞出版)、『これはしない、あれはする』(サンマーク出版)、『小林照子流 ハッピーシニアメイク』(河出書房新社)ほか著書多数

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